書き出し
佛教が始めて我國に渡來してから、六百餘年を經て所謂鎌倉時代に入り、淨土宗、日蓮宗、淨土眞宗、時宗、それに教外別傳の禪宗を加へて、總計五ツの新宗派が前後六七十年の間に引續いて起つたのは、我國宗教史上の偉觀とすべきものであつて、予は之を本邦の宗教改革として、西洋の耶蘇紀元十六世紀に於ける宗教改革に對比するに足るものと考へる、其理由は雜誌「藝文」の明治四十四年七月號に「東西の宗教改革」として載せてあるから、詳細はそれに讓つて今は省略に從ふ、併ながら講演の順序としては、此等各宗の教義の内容に深入...
底本
「日本中世史の研究」同文館, 1929(昭和4)年11月20日