書き出し
型の如く、青竹につるした白張の提灯、紅白の造花の蓮華、紙に貼付けた菓子、雀(すゞめ)の巣さながらの藁細工の容物に盛つた野だんご、ピカピカ磨きたてた真鍮の燭台、それから、大きな朱傘をさゝせた、着飾つた坊さん、跣(はだし)の位牌持ち、柩(ひつぎ)、――生々しい赤い杉板で造つた四斗樽(だる)ほどの棺桶で、頭から白木綿で巻かれ、その上に、小さな印ばかりの天蓋が置かれてある。
初出
1922年
(「野の哄笑」1922(大正11)年9月)
底本
「現代日本文學大系 49 葛西善藏 嘉村礒多 相馬泰三 川崎長太郎 宮路嘉六 木山捷平 集」筑摩書房, 1973(昭和48)年2月5日