60分以内で読める坂口安吾の中編作品

桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になりますが、これは嘘です。

「日本的」ということ僕は日本の古代文化に就て殆んど知識を持っていない。

もう十日、歯がいたい。

伊豆の伊東にヒロポン屋というものが存在している。

死のふは一定、しのび草には何をしよぞ、一定かたりをこすよの――信長の好きな小唄――立入左京亮が綸旨二通と女房奉書をたずさえて信長をたずねてきたとき、信長は鷹狩に出ていた。

去年、小林秀雄が水道橋のプラットホームから墜落して不思議な命を助かったという話をきいた。

矢島は社用で神田へでるたび、いつもするように、古本屋をのぞいて歩いた。

岡本は谷村夫妻の絵の先生であつた。

松夫はちかごろ考えすぎるようであった。

私は放校されたり、落第したり、中学を卒業したのは二十の年であった。

宝塚少女歌劇というものは、現代の神話的存在の一ツである。

昔、花山院の御時、紫の大納言という人があった。

小田原陣天正十八年真夏のひざかりであつた。

三高木工所の戸口には、「選挙中休業」のハリガミがでている。

戦争中、私ぐらいだらしのない男はめったになかったと思う。

徳川家康は狸オヤジと相場がきまっている。

一九四七年六月六日私は遠足に行く子供のやうな感動をもつて病院をでた。

天草四郎という美少年は実在した人物には相違ないが、確実な史料から彼の人物を知ることはほとんどできない。

「扨（さ）て一人の男が浜で死んだ。

カマキリ親爺は私のことを奥さんと呼んだり姐さんと呼んだりした。

急行列車が駅にとまると、二人か三人の私服刑事らしき人物が車内の人物の面相を読みつつ窓の外を通りすぎる。

私の父は私の十八の年（丁度東京の大地震の秋であつたが）に死んだのだから父と子との交渉が相当あつてもよい筈なのだが、何もない。

「なア、ベク助。

勝海舟の明治二十年、ちょうど鹿鳴館時代の建白書の一節に次のようなのがある。

国史上「威風高き女性」をもとめると数は多いが、私は高野天皇の威風が好きである。

私はそのころ耳を澄ますようにして生きていた。

消えた男「ここの女主人は何者だろうな」この家の前を通る時、波川巡査は習慣的にふとそう思う。

この村からは陸海軍大佐が各一名でた。

恋わずらい梅玉堂は東京で古くから名のある菓子店である。

魂や情熱を嘲笑うことは非常に容易なことなので、私はこの年代に就て回想するのに幾たび迷ったか知れない。

郊外電車がＦ駅についたのが十一時三十五分。

その山奥の村に殺人事件があった。

この元日に飛行機にのった。

海を見たことがないという山奥の子供でも汽車や自動車は見なれているという文化交通時代であるが、紀伊半島を一周する汽車線はいまだに完成していない。

まえがき仕事の用で旅にでることが多いので、その期間の新聞を読み損うことが少くない。

谷村は駅前まで行つて引返してきた。

妻を忘れた夫の話山口静江（廿四歳）『これが僕のワイフか？違うなア』行方不明になって以来三ヶ月ぶりでやっと三鷹町井ノ頭病院の一室に尋ねあてた夫は取り縋ろうとする私をはね返すように冷く見据えて言い切るのでした。

男子は慰藉料をもらえないという話婚姻予約不履行による慰藉料損害賠償請求事件の訴状中央区京橋八丁堀、吉野広吉方でクリーニング業に従っていた原告、羽山留吉は、昭和二十三年六月八日新堀仲之助氏の口ききで被告中山しづと見合の上新堀、吉野両氏夫婦の媒酌で、同年八月十九日三越本店式場で結婚式をあげ事実上の婚姻予約をなした。

京の西の岡というところに、松波基宗という北面の武士が住んでいた。

アナタハン島の悲劇はむろん戦争がなければ起らなかった。

彼は子供の時から、ホラブンとよばれていた。

私は犬が好きだ。

「オラトコのアネサには困ったもんだて。

魚屋と床屋のケンカのことその日は魚屋の定休日であった。

目明の鼻介は十手の名人日本一だという大そうな気取りを持っていた。

私はそのころ耳を澄ますやうにして生きてゐた。

ふと校庭を眺めると、例の学生がまた走っていた。

不見転観相学桜井大路この写真（次頁の）から観た処では、額、眉、耳と何れにも非常に強く反家庭的な相が感じられる。

蒲原氏は四十七歳になつてゐた。

文字と画はこうも違うものかね。