書き出し
金杉惇郎君は、なかなかの理論家で、演劇の実際家としても、一つの勇敢な主張を振り翳し、着々、劇界の地歩を占めつつあることは、私はじめ期待と興味をもつて眺めつつあるのであるが、同君は、先頃、「劇作」誌上に、日本の新劇が面白くないわけは、「歌ふな話せ、踊るな動け」といふ古臭い信条を今だに墨守してゐるからで、これからの新劇は、「話すな歌へ、動くな踊れ」でなければならぬ。
初出
1933年
(「劇作 第二巻第一号」1933(昭和8)年1月1日)
底本
「岸田國士全集22」岩波書店, 1990(平成2)年10月8日