書き出し
わが國はポツダム宣言受諾の結果,民主主義の平和國家として更生することとなつた.このことは今度の新憲法に具象化せられて居つて,人民のために人民が行ふ政體をとるのである.從つて人民各自の人格の高低はとりも直さず,我國の浮沈を決定するものに他ならない.ここに人格といふのは,道義心,性格,教養等を含めた全體の屬性を指すのである.然らばわが國民の人格の水準は今日どうであらうか.それは犯罪の詳しい統計を調べればすぐわかることであるが,それを俟つまでもなく毎日の各人の體驗が最も雄辯にこれを物...
初出
1946年
(「自然」1946(昭和21)年12月)
底本
「自然 300号記念増刊 総収録 仁科芳雄・湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一」中央公論社, 1971(昭和46)年3月20日