30分以内で読める下村千秋の短編作品

頭は少々馬鹿でも、腕っぷしさえ強ければ人の頭に立っていばっていられるような昔の時代であった。

昔、ある村に重吉と六兵衛という二人の少年が住んでいました。

むかし、鳥取のある町に、新しく小さな一軒の宿屋が出来ました。

天下の勢力を一門にあつめて、いばっていた平家も、とうとう源氏のためにほろぼされて、安徳天皇を奉じて、壇ノ浦のもくずときえてからというもの、この壇ノ浦いったいには、いろいろのふしぎなことがおこり、奇怪なものが、あらわれるようになりました。

桑畑の中に、大きな葉をだらりと力なく垂れた桐の木に、油蝉がギリ／＼啼きしきる午後、學校がへりの子供が、ほこりをけむりのやうに立てゝ來る――。

日が暮れると、北の空に山のやうに盛り上つた黒雲の中で雷光が閃めいた。