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徳永直の全作品

青空文庫で公開されている徳永直の全作品9篇を、おすすめ人気順で表示しています。

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日露戦争がどんな理由、如何なる露国の、日本に対する圧迫、凌辱に依って、日本の政府が、あの如く日本国民を憤起させて敢て満洲の草原に幾万の同胞の屍(しかばね)を曝(さら)させたかは、当時、七歳にしかならない私に分りようがなかった。
私は今年四十二才になる。
[#ページの左右中央]日本の活字[#改丁]活字の發明について私が關心をもつやうになつたのはいつごろからであつたらう?私は幼時から大人になるまで、永らく文撰工や植字工としてはたらいてゐた。
善ニョムさんは、息子達夫婦が、肥料を馬の背につけて野良へ出ていってしまう間、尻骨の痛い寝床の中で、眼を瞑(つぶ)って我慢していた。
「ね、あんた、今のうち、尾久の家(親類)へでも、行っちゃったがいいと思うんだけど……」女房のお初が、利平の枕許でしきりと、口説きたてる。
「タッちゃん、なに読んでるの?」これも読書組の、トシが傍へよってきて、のぞきこんだ。
郷里の家に少しばかりの金を、送金したその受取りの返事を、今朝(工場の休みを)まだ寝床にいた私の枕許へ、台所にいた妻が持ってきた。
――ほこりっぽい、だらだらな坂道がつきるへんに、すりへった木橋がある。
この南九州の熊本市まで、東京から慌ただしく帰省してきた左翼作家鷲尾和吉は、三日も経つともうスッカリ苛々していた――。
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