書き出し
俺は再び海を見るのだ!ひろいひろい海を見るのだ!それは、絵より詩よりもっと大きい、もっと美しい動いている海、輝いている海!ああはっきりと映って来る海!俺は岩に腰をおろしたやせた両手を胸に抱いた「貴方の御出をどんなに待ったか知れません、よくも貴方は、生きて再び私の姿を見て呉れます……」海は大きい胸をたたいてまず何よりもにっこりしたそして鮮な潮の香りをたえず――俺の体に送った泣きた...
初出
1921年
(「種蒔く人」1921(大正10)年11月号)
底本
「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社, 1987(昭和62)年5月25日