書き出し
初夏ともなれば百円ぐらゐのパナマ帽がいたについて見ばえのある風格をみよちと遊びに来給へと名刺をくれるのだ名刺といへばかれもまた一流の名士にして普く八方に疎通してあますところは無いのであるさつそく鄭重な御供物をおくり盛大な葬儀に列してゐるを見る門札をうつて居を構へてゐるその収入の道その収入のほどは否税務署の吏員氏さへ難渋するのだから今これを窺ふべくもないのである午後かれを訪問すればしたしく応接間に召じいれ熱あり魅力あ...
底本
「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」国書刊行会, 1991(平成3)年6月6日