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60分以内で読める野村胡堂の中編作品(2ページ目)

青空文庫で公開されている野村胡堂の作品の中で、おおよその読了目安時間が「60分以内」の中編318作品を、おすすめ人気順に表示しています。

(12,001〜24,000文字の作品を対象としています。読了時間は「400字/分」の読書スピードで計算した場合の目安です)
51〜100件 / 全318件
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「親分、あっしは、気になってならねえことがあるんだが」「何だい、八、先刻から見ていりゃ、すっかり考え込んで火鉢へ雲脂をくべているようだが、俺はその方がよっぽど気になるぜ」捕物の名人銭形の平次は、その子分で、少々クサビは足りないが、岡っ引には勿体ないほど人のいい八五郎の話を、こうからかい気味に聞いてやっておりました。
江戸開府以来の捕物の名人と言われた銭形平次も、この時ほど腹を立てたことはないと言っております。
「親分ちょいと――」ガラッ八の八五郎は、膝小僧で歩くように、平次のとぐろを巻いている六畳へ入って来ました。
「親分、聽いたでせう?」ガラツ八の八五郎は、鐵砲玉のやうに飛び込んで來ると、格子戸と鉢合せをして、二つ三つキリキリ舞ひをして、バアと狹い土間へ長んがい顎を突き出すのです。
「親分、ちよいと江戸をあけますがね」八五郎はいきなりこんなことを言つて來たのです。
江戸開府以來の捕物の名人と言はれた錢形の平次が、幽靈から手紙を貰つたといふ不思議な事件は、子分のガラツ八こと、八五郎の思ひも寄らぬ縮尻から始まりました。
「親分、たまらねえ事があるんで、これから日本橋まで出かけますよ、いっしょに行って見ちゃ何うです」巳(み)の刻近い、真昼の日を浴びて、八五郎はお座敷を覗いて顎を撫でるのです。
増田屋金兵衞、その晩は明るい内から庭に縁臺を持出させ、九月十三夜の後の月を、たつた一人で眺めることにきめました。
「八、近頃お前は、大層な男になつたんだつてね」錢形平次は、珍らしく此方から水を向けました。
神田祭は九月十五日、十四日の宵宮は、江戸半分煮えくり返るような騒ぎでした。
「考へて見ると不思議なものぢやありませんか。
新吉は眼の前が真っ闇になるような心持でした。
プロローグ「さて皆様、私はここで、嘘のような話を聴いて頂きたいのであります。
「親分、面白い話がありますぜ」ガラッ八の八五郎、銭形平次親分の家へ呶鳴り込みました。
「親分、お早やうございます。
「八、大變なことがあるさうぢやないか」江戸開府以來と言はれた、捕物の名人錢形平次は、粉煙草の煙りを輪に吹きながら、いとも寛々たる態度で、飛び込んで來た子分の八五郎に、かう浴びせるのでした。
「親分、お願いがあるんだが」ガラッ八の八五郎は言いにくそうに、長い顎を撫(な)でております。
早春のよく晴れた陽を浴びて、植木の世話をしてゐる平次の後ろから、「親分、逢つてやつて下さいよ。
「江戸中の評判なんですがね、親分」「何が評判なんだ」ガラッ八の八五郎が、何か変なことを聞込んで来たらしいのを、銭形の平次は浮世草紙の絵を眺めながら、無関心な態度で訊き返しました。
「お早う」ガラッ八の八五郎は、尋常な挨拶をして、慎み深く入って来ると、お静のくんで出した温かい茶を、お薬湯のように押し戴いて、二た口三口啜(すす)りながら、上眼づかいに四辺を見廻すのでした。
「親分、あつしはよく/\運が惡いんだね」ガラツ八の八五郎は、なんがい顎を撫でながら、つく/″\斯(こ)んな事をいふのです。
本郷菊坂の六軒長屋――袋路地のいちばん奥の左側に住んでいる、烏婆アのお六が、その日の朝、無惨な死骸になって発見されたのです。
「人の心といふものは恐ろしいものですね、親分」八五郎が顎を撫で乍ら、いきなりそんな事を言ふのです。
「親分、大変なものを拾って来ましたぜ」八五郎のガラッ八は、拇指を蝮(まむし)にして、自分の肩越しに入口の方を指しながら、日本一の突き詰めた顔をするのでした。
江戸名物の御用聞銭形の平次が、後にも前にもこんなひどい目に逢ったことがないという話。
「あ、あ、あ、あ、あ」ガラツ八の八五郎は咽喉佛のみえるやうな大欠伸をしました。
プロローグ「世の中のあらゆる出来事が、みんな新聞記事になって、そのまま読者に報道されるものと思うのは大間違いです。
「親分、こいつは驚くぜ、――これで驚かなかった日にゃ、親分とは言わせねえ」息せき切って駆けつけたガラッ八の八五郎、上がり框(かまち)に両手を突いて、「物申し上ぐる型」に長い顔を振り仰ぐのでした。
「親分、幽霊を見たことがありますかい」「そんなものに近付きはねえよ。
石原の利助が大怪我をしたという噂(うわさ)を聞いた銭形の平次、何を差措いても、その日のうちに見舞に行きました。
昼頃から降り続いた雪が、宵には小やみになりましたが、それでも三寸あまり積って、今戸の往来もハタと絶えてしまいました。
「平次、頼みがあるが、訊いてくれるか」南町奉行配下の吟味与力筆頭笹野新三郎は、自分の役宅に呼び付けた、銭形の平次にこう言うのでした。
「八、お前近頃惡い料簡を起しやしないか。
兩國の川開きが濟んで間もなく、それは脂汗のにじむやうな、いやに、蒸し暑い晩でした。
「困つたことがあるんだがな、八」よく/\の事でせう、錢形平次は額に煙草を吸はせて、初秋のケチな庭を眺めるでもなく、ひどく屈托して居るのです。
プロローグ小説家大磯虎之助は、奇談クラブのその夜の話し手として、静かに壇上に起ちました。
「親分、世の中には變な野郎があるもんですね」八五郎は彌造を二つ拵へたまゝ、フラリと庭へ入つて來ました。
「あツ危ねえ」錢形の平次は辛くも間に合ひました。
「親分、先刻から路地の中を、往つたり來たり、お百度を踏んでゐる女がありますが、ありや何でせう」八五郎は自分の肩越しに、煙管の吸口で格子の外を指すのです。
「親分、笑っちゃいけませんよ」「何だ、八」「親分もあっしも同じ人間でしょう」ガラッ八の八五郎はまた変なことを言い出しました。
橋の袂に美女の裸身しはんほになすはかはすなにほんはし「吝嗇漢に茄子は買は(わ)すな日本橋――か、ハッハッハッハ、こいつは面白い、逆さに読んでも同じだ、落首もこれ位になると点に入るよ」「穿(うが)ってるぜ、畜生め、まったく御改革の今日びじゃ、五十五貫の初鰹どころか、一口一分の初茄子せえ、江戸ッ子の口にゃ入えらねえ、何んのことはねえ、八百八町、吝嗇漢のお揃いとけつからア、オロシヤの珍毛唐が風の便りに聞いて笑って居るとよ、ヘッヘッヘッヘッ」場所もあろうに、...
「八、たいそう手前は粋になったな」「からかっちゃいけません、親分」八五郎のガラッ八は、あわてて、膝っ小僧を隠しました。
心中でもしようといふ者にとつて、その晩はまことに申分のない美しい夜でした。
すべて恋をするものの他愛なさ、――八五郎はそれをこう説明するのでした。
「親分は長い間に隨分多勢の惡者を手掛けたわけですが、その中で何んとしても勘辨ならねエといつた奴があるでせうね」ガラツ八の八五郎は妙なことを訊ねました。
「やい、ガラッ八」「ガラッ八は人聞きが悪いなア、後生だから、八とか、八公とか言っておくんなさいな」「つまらねエ見得を張りやがるな、側に美しい新造でも居る時は、八さんとか、八兄哥とか言ってやるよ、平常使いはガラッ八で沢山だ。
かねやす迄を江戸のうちと言つた時代、巣鴨や大塚はそれから又一里も先の田舍で、田も畑も、武藏野の儘の木立も藪もあつた頃のことです。
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