詩を書き出してから、すでに四十年に近いのであるが、さてしかし、詩とはなにかと来られると四十年の...
詩を書き出してから、すでに四十年に近いのであるが、さてしかし、詩とはなにかと来られると四十年の年月もぐらつくみたいで先ず、当惑をもって答えるしかないのである。
人間は、生れてしばらくの間を赤ん坊と言われ、そのうちに幼年、少年、青年、壮年、老年という順を経...
人間は、生れてしばらくの間を赤ん坊と言われ、そのうちに幼年、少年、青年、壮年、老年という順を経て、墓場に永住することになるわけである。
×月×日金眼を覚ましてみると、側に寝ていた筈の六さんの姿は見えなかった。
×月×日金眼を覚ましてみると、側に寝ていた筈の六さんの姿は見えなかった。
野次馬これはおどろいたこの家にもテレビがあったのかいと来たのだが食うのがやっとの家にだってテレ...
野次馬これはおどろいたこの家にもテレビがあったのかいと来たのだが食うのがやっとの家にだってテレビはあって結構じゃないかと言うと貰ったのかいそれとも買ったのかいと首をかしげるのだどちらにしても勝手じゃないかと言うと買ったのではないだろう貰ったのだろうと言うわけなのだがいかにもそれは真実その通りなのだがおしつけられては腹立たしくて余計なお世話をするものだと言うとまたしてもどこ吹く風なのか...
この間の朝、裏の井戸端へ顔を洗いに行くと、近所の人に出会したので、「おはようごさいます。
この間の朝、裏の井戸端へ顔を洗いに行くと、近所の人に出会したので、「おはようごさいます。
十年を一昔とみれば、昔の昔の昔から、ぼくは酒を飲んで来たわけである。
十年を一昔とみれば、昔の昔の昔から、ぼくは酒を飲んで来たわけである。
小学校の六年生になってからのこと、ぼくは机の前に座っていても、それは父や兄などの手前で、勉強し...
小学校の六年生になってからのこと、ぼくは机の前に座っていても、それは父や兄などの手前で、勉強しているふりをしているにすぎなかった。
その日、朝は、どしゃ降りなのであったが、午後になると、からりと晴れて、縁側に陽がさした。
その日、朝は、どしゃ降りなのであったが、午後になると、からりと晴れて、縁側に陽がさした。
あとになって、きいたことなのであるが、ずっと前にそこに住んでいたうちの娘さんが、毒をのんで便所...
あとになって、きいたことなのであるが、ずっと前にそこに住んでいたうちの娘さんが、毒をのんで便所のなかで死んでいたという噂のある家なのである。
争えないもので、顔までがいつのまにやらそういう顔つきになってしまったのであろう。
争えないもので、顔までがいつのまにやらそういう顔つきになってしまったのであろう。
おんなじ沖縄出身である旧知の男に出会したところ、かれはぼくに「あなたの放送を聞きましたよ」と言...
おんなじ沖縄出身である旧知の男に出会したところ、かれはぼくに「あなたの放送を聞きましたよ」と言ったが、「しかしあなたの日本語はひどいもんですな、まるでおきなわやまとぐちのまる出しじゃありませんか」と来たのである。
ぼくの最初の詩集『思弁の苑』を出版したのは、昭和十三年の八月である。
ぼくの最初の詩集『思弁の苑』を出版したのは、昭和十三年の八月である。
郷里の沖縄から、上京したのは大正十一年の秋のことであったがその年の冬に、はじめて、ぼくは雪を見た。
郷里の沖縄から、上京したのは大正十一年の秋のことであったがその年の冬に、はじめて、ぼくは雪を見た。
三十五年ぶりで郷里に帰り、ついこのごろになって帰京した。
三十五年ぶりで郷里に帰り、ついこのごろになって帰京した。
かつて、アンドレ・ジイドのソヴィエットへの関心を知るや否や、それを以て直ちに、赤化したアンドレ...
かつて、アンドレ・ジイドのソヴィエットへの関心を知るや否や、それを以て直ちに、赤化したアンドレ・ジイドと見なしたかのような観方をした人々が、日本の国にあったと記憶する。
池袋のコーヒー店で、I氏を待っている間を、顔見知りの常連の人達が来るたびに、宝くじを買ったこと...
池袋のコーヒー店で、I氏を待っている間を、顔見知りの常連の人達が来るたびに、宝くじを買ったことがあるかどうかを一々たずねてみた。
ぼくが、まだ、おっぱいをのんでいたころのある日のことである。
ぼくが、まだ、おっぱいをのんでいたころのある日のことである。
このごろの泡盛屋では、琉球料理を食べさせるようになったので琉球出身のぼくなどにとっては何よりである。
このごろの泡盛屋では、琉球料理を食べさせるようになったので琉球出身のぼくなどにとっては何よりである。
喪のある景色うしろを振りむくと親である親のうしろがその親であるその親のそのまたうしろがまたその...
喪のある景色うしろを振りむくと親である親のうしろがその親であるその親のそのまたうしろがまたその親の親であるといふやうに親の親の親ばつかりがむかしの奧へとつづいてゐるまへを見るとまへは子である子のまへはその子であるその子のそのまたまへはそのまた子の子であるといふやうに子の子の子の子の子ばつかりが空の彼方へ消えいるやうに未來の涯へとつづいてゐるこんな景色のなかに神のバ...
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