書き出し
わが古きまづしきうたのたぐひここにとり集へてひと卷のふみをばなしつ、名づけて春の岬といふ、ふみのはじめに感をしるして序を添へよとは人の命ずるところなり、あな蛇足をしひたまふものかな、よしやつたなかるともわがうたのかずかずうちかへしわが感をのべたるものを、とてその夜わびしらに率然とおのれつぶやけるつぶやきわが若き十とせあまりのとしつきのいつしかにはやすぎゆきてあとこそなけれそこばくのうたはのこりつそのなかばいまここにあり...
初出
1939年
(「春の岬」創元選書、創元社、1939(昭和14)年4月)
底本
「三好達治全集第一卷」筑摩書房, 1964(昭和39)年10月15日