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蔵原伸二郎の全作品

青空文庫で公開されている蔵原伸二郎の全作品7篇を、おすすめ人気順で表示しています。

1〜7件 / 全7件
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岩魚――宋青磁浮紋双魚鉢――五月のあかるい昼さがりあまりに生の時間が重いので私はひとり青磁の鉢を見ている空いろの底に二匹の岩魚が見えたりかくれたりすぎる風に水がゆれると岩魚の背もかすかに紅いろに光るまた水底をよぎる遠い宋時代の雲ながい時間のかげりをひいて愁いの淵に岩魚はねむり時に目を醒ましてはねるといつのまにか蒼天をおよいでいる鮭白い皿の上の...
めぎつね野狐の背中に雪がふると狐は青いかげになるのだ吹雪の夜を山から一直線に走つてくるその影凍る村々の垣根をめぐりみかん色した人々の夢のまわりを廻つて青いかげはいつの間にか鶏小屋の前に坐つている二月の夜あけ前とき色にひかる雪あかりの中を山に帰つてゆく雌狐狐はみごもつている黄昏いろのきつね山からおりて来た狐が村の土橋のあたりまでくる...
ずつと昔のこと一匹の狐が河岸の粘土層を走つていつたそれから何万年かたつたあとにその粘土層が化石となつて足跡が残つたその足跡を見ると、むかし狐が何を考えて走つていつたのかがわかる。
釣竿の影がうつつているこの無限の中で釣をする人はしつかり岩の上に坐つたままねむつているねむつたまま竿をにぎつている今日は川魚たちの祝祭日みんな青い時間の流れにそつてさがつている針を横目でにらみながら通りすぎる今までどうにか生き残つた魚たちの今日はお祭りなんだよ先頭を行く逞しい雄のあとを紅いろに着飾つた雌たちが一列になつておよいでゆく水底の砂にゆれる光る青空と白い雲...
はからずも権威ある読売文学賞を受賞して驚くとともに、たいへんうれしく思つています。
岸辺冬の日がかんかん照つていた川岸の枯草の中から首だけ出して八十九歳の老人が釣をしていた釣竿をもつたまま水に映るちぎれ雲の間をおよぐ冬の魚たちと昔話をしながら老人は死んでいたちかちかと日はかたむいていた一匹の紋白蝶がよたよたと向う岸に渡つていつた魚たちが老人を呼んでいた赤い小さなうきがかすかな波紋をおこして沈んだり浮いたりしている不在の人...
五月の雉風の旅びとがこつそり尾根道を通るここはしずかな山の斜面一匹の雌きじが卵を抱いている青いハンカチのように夕明かりの中をよぎる蝶谷間をくだるせせらぎの音ふきやもぐさの匂いが天に匂う(どこからも鉄砲の音などきこえはしない)一番高い山の端に陽がおちる乳いろのもやが谷々からのぼつてくるやがて、うす化粧した娘のような新月がもやの中からゆつくりと顔を出す――今晩は、きじの...
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