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児童書版

蔵原伸二郎
『狐』は青空文庫で公開されている蔵原伸二郎の短編作品。1,572文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
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5分以内   1,572 文字
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書き出し
めぎつね野狐の背中に雪がふると狐は青いかげになるのだ吹雪の夜を山から一直線に走つてくるその影凍る村々の垣根をめぐりみかん色した人々の夢のまわりを廻つて青いかげはいつの間にか鶏小屋の前に坐つている二月の夜あけ前とき色にひかる雪あかりの中を山に帰つてゆく雌狐狐はみごもつている黄昏いろのきつね山からおりて来た狐が村の土橋のあたりまでくる...
初出
1957年   (おぎつね「陽炎」1957(昭和32)年3月号<br> きつね「詩学」1955(昭和30)年10月号<br> 老いたきつね「花粉 第五号」1958(昭和33)年5月)
底本
「近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎」新学社, 2005(平成17)年10月12日
表記
新字新仮名
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蔵原伸二郎 の人気作品

岩魚
蔵原伸二郎
岩魚――宋青磁浮紋双魚鉢――五月のあかるい昼さがりあまりに生の時間が重いので私はひとり青磁の鉢を見ている空いろの底に二匹の岩魚が見えたりかくれたりすぎる風に水がゆれると岩魚の背もかすかに紅いろに光るまた水底をよぎる遠い宋時代の雲ながい時間のかげりをひいて愁いの淵に岩魚はねむり時に目を醒ましてはねるといつのまにか蒼天をおよいでいる鮭白い皿の上の...
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蔵原伸二郎
めぎつね野狐の背中に雪がふると狐は青いかげになるのだ吹雪の夜を山から一直線に走つてくるその影凍る村々の垣根をめぐりみかん色した人々の夢のまわりを廻つて青いかげはいつの間にか鶏小屋の前に坐つている二月の夜あけ前とき色にひかる雪あかりの中を山に帰つてゆく雌狐狐はみごもつている黄昏いろのきつね山からおりて来た狐が村の土橋のあたりまでくる...
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蔵原伸二郎
釣竿の影がうつつているこの無限の中で釣をする人はしつかり岩の上に坐つたままねむつているねむつたまま竿をにぎつている今日は川魚たちの祝祭日みんな青い時間の流れにそつてさがつている針を横目でにらみながら通りすぎる今までどうにか生き残つた魚たちの今日はお祭りなんだよ先頭を行く逞しい雄のあとを紅いろに着飾つた雌たちが一列になつておよいでゆく水底の砂にゆれる光る青空と白い雲...
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自序にかえて
蔵原伸二郎
はからずも権威ある読売文学賞を受賞して驚くとともに、たいへんうれしく思つています。
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