60分以内で読める田山花袋の中編作品

山手線の朝の七時二十分の上り汽車が、代々木の電車停留場の崖下を地響きさせて通るころ、千駄谷の田畝をてくてくと歩いていく男がある。

渠（かれ）は歩き出した。

大井、中津川の諸驛を過ぎて、次第に木曾の翠微に近けるは、九月も早盡きんとして、秋風客衣に遍ねく、虫聲路傍に喞々（しよく／＼）たるの頃なりき。

西鶴は大阪人ではあるけれども、それ以上に深い処を持つてゐると私は思ふ。

あゝ焼けたな――ある日の朝、Ｂは新聞を見ながら思はずかう独語した。

山の半腹を縫つた細い路を私は歩いて居た。

今月は久し振で月評をする気になつた。

なつかしきＫ先生、ゴオと吹きおろす凩の音に、又もや何等の幸福も訪れずに、夕暮がさびしくやつてまゐりました。

日本橋附近は変ってしまったものだ。

雑嚢を肩からかけた勇吉は、日の暮れる時分漸く自分の村近く帰って来た。

一行は樹立の深く生茂つた處から、岩の多い、勾配の高い折れ曲つた羊齒の路を喘ぎ喘ぎ登つて行つた。