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30分以内で読める小島烏水の短編作品

青空文庫で公開されている小島烏水の作品の中で、おおよその読了目安時間が「30分以内」の短編10作品を、おすすめ人気順に表示しています。

(4,001〜12,000文字の作品を対象としています。読了時間は「400字/分」の読書スピードで計算した場合の目安です)
1〜10件 / 全10件
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伊勢山から西戸部の高地一帯(久保山を含んで)にかけて、昔は、可なりに深い森林があつたらうと思はれる、その俤(おもかげ)の割合に保存されてるのは、今私の住居してゐる山王山附近である、もとよりこれぞといふ目ぼしい樹木もなく、武蔵野や相模原に、多く見るやうな雑木林で、やはり楢(なら)が一番多く、栗も樫(かし)もたまには交つてゐる。
不二より瞰(み)るに、眼下に飜展せられたる凸版地図の如き平原の中白面の甲府を匝(め)ぐりて、毛ばだちたる皺(しわ)の波を畳み、その波頭に鋭峻の尖(とが)りを起てたるは、是れ言ふまでもなく金峰山、駒ヶ嶽、八ヶ嶽等の大嶽にして、高度いづれも一万尺に迫り、必ずしも我不二に下らざるが如し、不二は自らその高さを意識せざる謙徳の大君なり、裾野より近く不二を仰ぐに愈(いよい)よ低し、偉人と共に家庭居するものは、その那辺が大なるかを解する能はざるが如し。
このたび、松本市に開かれた信濃山岳研究会に、来会したのを、機会として、私は松本市から遠くない、上高地温泉のために、温泉のためではない、日本アルプス登山の中心点のために、将た敬虔なる順礼の心を以て、日本アルプスという厳粛なる自然の大伽藍に詣でる人々のために、同地にある美しい森林の濫伐に関して、公開状を提出する。
雨で閉じこめられた、赤沢小舎の一夜が明ける。
今朝は寒いと思うとき、わが家の背後なる山王台に立って、遥かに西の方を見渡すと、昨夜の風が砥(と)ぎ澄まして行った、碧く冴えた虚空の下には、丹沢山脈の大山一帯が、平屋根の家並のように、びったり凍かんで一と塊に圧しつけられている。
泊まったのは、二の俣(また)の小舎である。
アルプスに Alpine Glow(山の栄光)という名詞がある、沈む日が山の陰へ落ちて、眼にも見えなくなり、谷の隅々隈々に幻の光が、夢のように彷徨(さまよ)い、また消えようとするとき、二、三分の間、雪の高嶺に、鮮やかな光が這(は)って、山の三角的天辺が火で洗うように耀(かがや)く、山は自然の心臓から滴れたかと思う純鮮血色で一杯に染まる、まことに山の光栄は落日である、さればラスキンも『近世画家論』第二巻に、渚へ寄する泡沫と、アルプス山頂の雪とは、海と山とを描いて、死活の岐れるところだという...
私たちが学生旅行をした時代には、日本の名山と言えば、殆んど火山に限られたように思われていた、富士山にさえ登り得らるれば、あとはみんな、それよりも低く、浅く、小さい山であるから、造作はないぐらいに考えていた、そのころ、今日でいう日本アルプス系の大山嶺で、私が名を知っていたものは、立山御嶽などいう火山の外には、木曾の駒ヶ岳(大部分黒雲母花崗岩より成る)ぐらいなものであった、いま憶い出しても笑わずにはいられないのは、その時代、或(ある)地理書の山岳高度表で、富士山の次に、白峰だの赤石山だのとい...
山仲間から、アメリカで好きな山は何か、と聞かれると、一番先きに頭に浮ぶのは、シャスタ山である。
明科停車場を下りると、犀(さい)川の西に一列の大山脈が峙(そばだ)っているのが見える、我々は飛騨山脈などと小さい名を言わずに、日本アルプスとここを呼んでいる、この山々には、名のない、あるいは名の知られていない高山が多い、地理書の上では有名になっていながら、山がどこに晦(か)くれているのか、今まで解らなかったのもある――大天井岳などはそれで――人間は十人並以上に、一寸でも頭を出すと、とかく口の端にかかる、あるいは嫉みの槌(つち)で、出かけた杭が敲(たた)きのめされ...
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