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1時間〜で読める近松秋江の長編作品

青空文庫で公開されている近松秋江の作品の中で、おおよその読了目安時間が「1時間〜」の長編5作品を、おすすめ人気順に表示しています。

(24,001文字〜の作品を対象としています。読了時間は「400字/分」の読書スピードで計算した場合の目安です)
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……その女は、私の、これまでに数知れぬほど見た女の中で一番気に入った女であった。
二人の男の写真は仏壇の中から発見されたのである。
それからまた懊悩と失望とに毎日欝(ふさ)ぎ込みながらなすこともなく日を過していたが、もし京都の地にもう女がいないとすれば、去年の春以来帰らぬ東京に一度帰ってみようかなどと思いながら、それもならず日を送るうち一月の中旬を過ぎたある日のことであった。
そうして、それとともにやる瀬のない、悔しい、無念の涙がはらはらと溢(こぼ)れて、夕暮の寒い風に乾いて総毛立った私の痩せた頬(ほお)に熱く流れた。
拝啓お前――別れて了ったから、もう私がお前と呼び掛ける権利は無い。
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