10分以内で読める内藤湖南の短編作品

凡そ書籍の事に注意する人にして、乾隆の四庫全書の名を知らざる者は少からん。

清朝はその初頃から有名な藏書家が多く、錢謙益及その族孫錢曾、又は季振宜などは、順治より康煕の初年に有名であるが、併し藏書家の最盛期は乾隆の中頃以後にあるので、乾隆の末から嘉慶を經て、道光の初頃まで居つた蘇州の黄丕烈は最も有名で、殆ど清朝を通じて第一の藏書家と言つてよいのである。

日本に目録學なし。

天運は循環するか、意ふに其の循る所の環は、完全なる圓環にあらずして、寧ろ無窮なる螺旋形を爲す者たらんか、何となれば一個の中心點より開展して三のダイメンシヨンある空間を填充すべき一條線は、須らく無限に支派して螺形に纏繞する所の者たらざるべからざれば也。

滿洲の各種族の中で、古くは金國を形作り、後には清朝を出した所の女眞族は、或説には既に唐の初頃から現れて居ると云ひ、或説には五代に始めて知れたとも云はれてゐる。