ブンゴウサーチ
児童書版
TOP 原民喜 全作品

原民喜の全作品(3ページ目)

青空文庫で公開されている原民喜の全作品122篇を、おすすめ人気順で表示しています。

101〜122件 / 全122件
Tweet
作品名
著者
読了時間
人気
夕方の外食時間が近づくと、彼は部屋を出て、九段下の爼橋から溝川に添い雉子橋の方へ歩いて行く。
銀の鈴を振りながら、二頭の小山羊は花やリボンで飾られてゐる大きな乳母車を牽いて行つた。
その頃私はその朽ちて墜ちさうな二階の窓から、向側に見える窓を眺めることがあつた。
陽の光の圧迫が弱まってゆくのが柱に凭掛っている彼に、向側にいる妻の微かな安堵を感じさせると、彼はふらりと立上って台所から下駄をつっかけて狭い裏の露次へ歩いて行ったが、何気なく隣境の空を見上げると高い樹木の梢(こずえ)に強烈な陽の光が帯のように纏(まつ)わりついていて、そこだけが赫(かっ)と燃えているようだった。
※私が魯迅の「孤独者」を読んだのは、一九三六年の夏のことであったが、あのなかの葬いの場面が不思議に心を離れなかった。
真白い西洋紙を展げて、その上に落ちてくる午後の光線をぼんやり眺めていると、眼はその紙のなかに吸込まれて行くようで、心はかすかな光線のうつろいに悶(もだ)えているのであった。
夢のことを書く。
……音楽爆弾。
緑色の衝立が病室の内部を塞いでいたが、入口の壁際にある手洗の鏡に映る姿で、妻はベッドに寝たまま、彼のやって来るのを知るのだった。
何かうっとりさせるような生温かい底に不思議に冷気を含んだ空気が、彼の頬(ほお)に触れては動いてゆくようだった。
妻が息をひきとったとき、彼は時計を見て時刻をたしかめた。
〈一九四九年神田〉僕は通りがかりに映画館の前の行列を眺めてゐた。
僕はこの部屋にゐると、まるで囚人のやうな気持にされる。
いぶきが彼のなかを突抜けて行った。
夕暮青田の上の広い空が次第に光を喪つてゐた。
梢(こずえ)をふり仰ぐと、嫩葉のふくらみに優しいものがチラつくようだった。
自分の部屋でもないその部屋を自分の部屋のやうに、古びた襖や朽ちかかつた柱や雨漏のあとをとどめた壁を、自分の心の内部か何かのやうに安らかな気持で僕は眺めてゐる。
ここでは夜明けが僕の瞼の上に直接落ちてくる。
三畳足らずの板敷の部屋で、どうかすると息も窒がりさうになるのであつた。
八幡村へ移った当初、私はまだ元気で、負傷者を車に乗せて病院へ連れて行ったり、配給ものを受取りに出歩いたり、廿日市町の長兄と連絡をとったりしていた。
●昭和十一年四月三十日千葉市登戸より村岡敏(末弟・当時明治大学ホッケー部に在籍し、ベルリンオリンピックに代表として派遣された)宛今朝早くから女房が起すのであるそれから一日中オリンピツクのことを云つて女房は浮かれたうたう我慢が出来ないと云ふので速達を出すといふのである大変芽出度いこととワシも思ふのであるこの上は身躰に注意し晴れの榮冠を擔つてかへつて來い原家一同それを望んでやまないのである杞四月丗日村岡敏君万才●昭和十...
朝から粉雪が降っていた。
マークのついた作品は著作権が存続しています。 詳細は 青空文庫公式サイトの取り扱い基準 をご確認のうえ、取り扱いの際は十分注意してください。