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蘭郁二郎の全作品

青空文庫で公開されている蘭郁二郎の全作品24篇を、おすすめ人気順で表示しています。

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森源の温室奥伊豆――と呼ばれているこのあたりは、東京からいって、地理的にはほんの僅かな距離にあるのに、まるで別天地といってもよいほど、南国のような、澄み切った紺碧の空と、そして暖かい光線に充ち満ちていた。
辺鄙な、村はずれの丘には、いつの間にか、華やかな幕を沢山吊るした急拵(ごしら)えの小屋掛が出来て、極東曲馬団の名がかけられ、狂燥なジンタと、ヒョロヒョロと空気を伝わるフリュートの音に、村人は、老も若きも、しばし、強烈な色彩と音楽とスリルを享楽し、又、いつの間にか曲馬団が他へ流れて行っても、しばらくは、フト白い流れ雲の中に、少年や少女の縊(くび)れた肢体を思い出すのである。
チェッ、と野村は舌打をすることがよくあった。
――私は自分の弱い心を誤魔化す為に、先刻から飲めもしない酒を飲み続けていた。
「シュピオ」は本号で第四巻第三号を数えた。
ああ皆様、なんという私は、この呪われた運命の下に生れなければならなかったのでございましょう。
洋次郎は、銀座の裏通りにある“ツリカゴ”という、小さい喫茶店が気に入って、何時からとはなく、そこの常連みたいになっていた。
無くて七癖というように誰れでも癖は持っているものだが、水島の癖は又一風変っていた。
毎日毎日、気がくさくさするような霖雨が、灰色の空からまるで小糠のように降り罩(こ)めている梅雨時の夜明けでした。
それは何処であったか、ひどく荒涼とした景色であった。
さて、私がいまお話ししようというお話の主人公は、景岡秀三郎――という景岡浴場の主人なのですが、その人の色々変ったお話と、それに関連して探偵小説的な一つのトリックといったようなものを御紹介しようと思うのです。
私は、学生時代からの不眠が祟って、つい苦しまぎれに飲みはじめた催眠薬が、いつか習慣的になってしまったものか、どうしてもそれなしには、一日も過すことが出来なくなってしまったのです。
(一体、どうしたのだろう……)私は、すくなからず、不安になって来た。
下り一〇五列車は、黒く澱(よど)んだ夜の空気を引裂き、眠った風景を地軸から揺り動かして、驀進して行った。
高原の秋「いい空気だなア――」英二はそういって、小鼻をびくびくさせ、両の手を野球の投手のように思い切り振廻した。
寺田洵吉は今日も、朝から方々職を探してみたが、何処にもないとわかると、もう毎度のことだったが、やっぱり、又新たな失望を味って、当もなく歩いている中、知らず知らずに浅草公園に出ているのであった。
「おやっ?彼奴」村田が、ひょっと挙げた眼に、奥のボックスで相当御機嫌らしい男の横顔が、どろんと澱(よど)んだタバコの煙りの向うに映った――、と同時に(彼奴はたしか……)と、思い出したのである。
バー・オパール日が暮れて、まだ間もない時分だった。
鬱蒼と膨れあがって見える雑木の森が、左右から迫っている崖に地肌も見えぬばかり覆いかぶさっていた。
痛いばかりに澄み切った青空に、赤蜻蛉(とんぼ)がすーい、すーいと飛んでいた。
一、暁方は森の匂いがする六月の爽やかな暁風が、私の微動もしない頬を撫(なで)た。
黄昏――その、ほのぼのとした夕靄が、地肌からわき騰って来る時間になると、私は何かしら凝乎としてはいられなくなるのであった。
所長の発表が終ると、文字通り急霰のような拍手がまき起った。
海浜都市、K――。
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