織田作之助の全作品（2ページ目）

大阪は「だす」であり、京都は「どす」である。

年中夫婦喧嘩をしているのである。

今もそのアパートはあるだろうか、濡雑巾のようにごちゃごちゃした場末の一角に、それはまるで古綿を千切って捨てたも同然の薄汚れた姿を無気力に曝していた。

マルセル・パニョルの「マリウス」という芝居に、ピコアゾーという妙な名前の乞食が出て来るが、この人物はトガキによれば「この男年がない」ということになっている。

その時、寿子はまだ九つの小娘であった。

大阪は木のない都だといはれてゐるが、しかし私の幼時の記憶は不思議に木と結びついてゐる。

スタンダールは彼の墓銘として「生きた、書いた、恋した」という言葉を選んだということである。

大晦日に雪が降った。

はしがき武田さんのことを書く。

午後から少し風が出て来た。

医者に診せると、やはり肺がわるいと言った。

今年の正月、私は一歩も外へ出なかった。

ざまあ見ろ。

火遁巻千曲川に河童が棲んでいた昔の話である。

凍てついた夜の底を白い風が白く走り、雨戸を敲くのは寒さの音である。

『四つの都』の起案より脱稿まで『四つの都』は川島雄三氏の第一回演出作品であるが、同時に私にとっても第一回シナリオである。

裸の娘その日、朝から降り出した雨は町に灯りがつく頃ふとやみそうだったが、夜になると急にまた土砂降りになった。

女の構図キャバレエ十番館の裏は、西木屋町に面し、高瀬川が流れた。