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小山内薫の全作品

青空文庫で公開されている小山内薫の全作品7篇を、おすすめ人気順で表示しています。

1〜7件 / 全7件
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これは狐か狸だろう、矢張、俳優だが、数年以前のこと、今の沢村宗十郎氏の門弟で某という男が、或(ある)夏の晩他所からの帰りが大分遅くなったので、折詰を片手にしながら、てくてく馬道の通りを急いでやって来て、さて聖天下の今戸橋のところまで来ると、四辺は一面の出水で、最早如何することも出来ない、車屋と思ったが、あたりには、人の影もない、橋の上も一尺ばかり水が出て、濁水がゴーゴーという音を立てて、隅田川の方へ流込んでいる、致方がないので、衣服の裾を、思うさま絡上げて、何しろこの急流故、流されては一...
俳優というものは、如何いうものか、こういう談を沢山に持っている、これも或(ある)俳優が実見した談だ。
私の実見は、唯のこれが一度だが、実際にいやだった、それは曾(かつ)て、麹町三番町に住んでいた時なので、其家の間取というのは、頗(すこぶ)る稀(ま)れな、一寸字に書いてみようなら、恰(あだか)も呂の字の形とでも言おうか、その中央の棒が廊下ともつかず座敷ともつかぬ、細長い部屋になっていて、妙に悪るく陰気で暗い処だった。
私がまだ六つか七つの時分でした。
著いた晩はどうもなかつたの。
『あばよ、芝よ、金杉よ。
これは私が十七の時の話です。
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