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児童書版

月の夜

樋口一葉
『月の夜』は青空文庫で公開されている樋口一葉の短編作品。847文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数
5分以内   847 文字
人気
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書き出し
村雲すこし有るもよし、無きもよし、みがき立てたるやうの月のかげに尺八の音の聞えたる、上手ならばいとをかしかるべし、三味も同じこと、琴は西片町あたりの垣根ごしに聞たるが、いと良き月に弾く人のかげも見まほしく、物がたりめきて床しかりし、親しき友に別れたる頃の月いとなぐさめがたうも有るかな、千里のほかまでと思ひやるに添ひても行かれぬものなれば唯うらやましうて、これを仮に鏡となしたらば人のかげも映るべしやなど果敢なき事さへ思ひ出でらる。
初出
底本
「日本の名随筆58 月」作品社, 1987(昭和62)年8月25日
表記
新字旧仮名
※「人気」は青空文庫の過去10年分のアクセスランキングを集計した累計アクセス数から算出しています。

樋口一葉 の人気作品

たけくらべ
樋口一葉
廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お歯ぐろ溝に燈火うつる三階の騒ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行来にはかり知られぬ全盛をうらなひて、大音寺前と名は仏くさけれど、さりとは陽気の町と住みたる人の申き、三嶋神社の角をまがりてよりこれぞと見ゆる大厦もなく、かたぶく軒端の十軒長屋二十軒長や、商ひはかつふつ利かぬ処とて半さしたる雨戸の外に、あやしき形に紙を切りなして、胡粉ぬりくり彩色のある田楽みるやう、裏にはりたる串のさまもをかし、一軒ならず二軒ならず、朝日に干して夕日にしまふ手...
1時間〜
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1時間〜
にごりえ
樋口一葉
おい木村さん信さん寄つてお出よ、お寄りといつたら寄つても宜いではないか、又素通りで二葉やへ行く気だらう、押かけて行つて引ずつて来るからさう思ひな、ほんとにお湯なら帰りにきつとよつておくれよ、嘘(うそ)つ吐きだから何を言ふか知れやしないと店先に立つて馴染らしき突かけ下駄の男をとらへて小言をいふやうな物の言ひぶり、腹も立たずか言訳しながら後刻に後刻にと行過るあとを、一寸舌打しながら見送つて後にも無いもんだ来る気もない癖に、本当に女房もちに成つては仕方がないねと店に向つて閾(しき...
60分以内
にごりえ
樋口一葉
おい木村さん信さん寄つてお出よ、お寄りといつたら寄つても宜いではないか、又素通りで二葉やへ行く氣だらう、押かけて行つて引ずつて來るからさう思ひな、ほんとにお湯なら歸りに屹度よつてお呉れよ、嘘つ吐きだから何を言ふか知れやしないと店先に立つて馴染らしき突かけ下駄の男をとらへて小言をいふやうな物の言ひぶり、腹も立たずか言譯しながら後刻に後刻にと行過るあとを、一寸舌打しながら見送つて後にも無いもんだ來る氣もない癖に、本當に女房もちに成つては仕方がないねと店に向つて閾(...
60分以内