書き出し
第一曲われ正路を失ひ、人生の覊旅半にあたりてとある暗き林のなかにありき一―三あゝ荒れあらびわけ入りがたきこの林のさま語ることいかに難いかな、恐れを追思にあらたにし四―六いたみをあたふること死に劣らじ、されどわがかしこに享けし幸をあげつらはんため、わがかしこにみし凡ての事を語らん七―九われ何によりてかしこに入りしや、善く説きがたし、眞(まこと)の路を棄てし時、睡りはわが身にみち/\たりき一〇―一二されど恐れをもてわが心を刺しゝ溪の盡く...
底本
「ダンテ 神曲(上)」岩波文庫、岩波書店, 1952(昭和27)年8月5日