10分以内で読める青空文庫の短編作品（48ページ目）

四五年前から、戯曲を書いて見たまえって、周囲の友人に度び度びすすめられたことがあったんです。

人はこの語の意味する明瞭なる理念を知るものは稀であるが、屡宇宙という語を口にする。

（上）御坂で苦慮のこと甲州御坂峠の頂上に在る茶店の二階を借りて、長篇小説すこしづつ書きすすめて、九月、十月、十一月、三つきめに、やつと、茶店のをばさん、娘さん、と世間話こだはらず語り合へるくらゐに、馴れた。

わたくしが門を出ると、ちょうど、ピイピイ、笛をならしながら、らお屋が、あちらのかどをまがりました。

Ｒ村のピエル・フオンの城主を夏の間に訪問する約束だつたが、貧しい生活にのみ囚はれてゐる私は、決してそれだけの余暇を見出す事が出来ずにゐる間に、世は晩秋の薄ら寂しい候であつた。

昨日は失敬。

＊父が若い時にあつめた“Cook book”の文庫のうちに“American's popular Cook book”といふ、表紙にブルクリン橋の写真のついた、大きい本で重くて気の毒だが、画布のやうな布で作られてゐる本があるから、此処に寄る時にそれを持つて来て呉れないかといふことを私は、弟に言伝てた。

「たとい間違った信念でもかまいません、その信念を守って、精神を緊張させたならば、その緊張の続くかぎり、生命を保つことが出来ると思います」医師の村尾氏は、春の夜の漫談会の席上で、不老長寿法が話題に上ったとき、極めて真面目な顔をして、こう語りはじめました。

これも五月のはじめ、郊外の新緑にひたろうと、ブラリ寓を出でて、西武線の下井草までバス、あれから今日の半日を伸せるだけのして見ようと駅で掲示を見る、この線の終点は川越駅になっている、発駅は高田馬場である、そこで六十何銭かを投じて川越駅までの切符を求めた。

源之助の演る芝居に女団七と言ふのがある。

疲れはてしこころのそこに時ありてさやかにうかぶ渓のおもかげいづくとはさやかにわかねわがこころさびしきときし渓川の見ゆ独りゐてみまほしきものは山かげの巌が根ゆける細渓の水巌が根につくばひをりて聴かまほしおのづからなるその渓の音二三年前の、矢張り夏の真中であつたかとおもふ。

奈良県吉野郡掖上村茅原に茅原寺と云う真宗の寺院があった。

「吾輩は猫である」が明治三十八年に書かれてから、「明暗」が未完成のままのこされた大正五年まで、十二年ほどの間に漱石の文学的活動は横溢した。

「もう私は一切酒は飲まない。

人間の一生を縦に考へて見ただけでも、世間に就ての考へ方は各自に、非常に違つて来るやうなものである。

私は、呑んべえであるから、酒の肴にはいつも苦労する。

（封書――。

正ちゃんは、三つになったときに、はじめて自分には、お母さんのないことを知りました。

風と木広い野原は、雪におおわれていました。

はるかな森の梢に波立って居るうす紅い夕栄の雲の峯を見入りながら、私は花園の入口の柱によりかかって居る。

諸君、今日私はこの神聖なる衆議院に向って口を開きますことは初めてであります。

私は京の四条通りの、今、万養軒という洋食屋になってるところにあった家で生まれた。

まだ發表しないでそのまま何處かへ藏ひ込んでしまつたアポリネエルの飜譯が二三あつたのを思ひ出して、僕は數日前、ごちやごちやになつた手文庫の中を丹念に搜してゐたら、「贋救世主アンフィオン」などの譯稿と一しよに、そんなもののあつたのを僕自身すつかり忘れてゐた、四枚ばかりの色褪せた書簡箋に細かな字で書き込んである、或る一個の覺書が見つかつた。

硝子戸もない廊下では、朝夕の風がひどく身にしみるようになった。

※凡そ人は夢のなかに氣ままにしのびいることの出來ないたちのものである。

わたしのところに十三篇の原稿がまわされてきた。

窓帷をあけて、みつ子は窓から庭を見降した。

私は、最近米国の所謂文壇が、どんな作品を歓迎し称讚しているかは知らない。

上都合に出て来ると都合の空気を腹一杯に満喫したいのが念願である。

プロレタリア文学運動が一九三二年以来次第に運動として形を失って来たにもかかわらず、プロレタリア作品とよばれる作品は今日やはりずっと書きつづけられており、決して消えてしまってはいない。

春の山――と、優に大きく、申出でるほどの事ではない。

夜の東京の、新宿駅付近や、上野不忍池付近は、一種のジャングル地帯だと言われる。

十二月四日嵐のあとを追って、船が進むためか、噂に聞いた程船はあれない。

むかし、京都から諸国修行に出た坊さんが、白河の関を越えて奥州に入りました。

幼い頃の朧（おぼ）ろげな記憶の糸を辿（たど）って行くと、江戸の末期から明治の初年へかけて、物売や見世物の中には随分面白い異ったものがあった。

「諸君！我輩は……」突然、悲憤の叫びを上げたのである。

大井川奥の田代から入って三伏峠まで、十数日に亙（わた）る南アルプスの縦走を企てたことがある。

「アヤカシの鼓」当選後の所感を書けとのことですが、只今のところ私のあたまは諸大家の御評を拝してすっかりたたきつけられていまして、いくらか残っていた自画自讃みたような気もちまでもパンクしてしまったばかりのところなので、所感なぞいう気もちにはとてもなれません。

最近某大学の卒業論文口頭試問の席へ立会つて、英文学専攻の卒業生がそれぞれ皆立派な研究を発表してゐるのに感服した。

朝から蒸暑かつた。

西は神通川の堤防を以て劃（かぎり）とし、東は町盡の樹林境を爲（な）し、南は海に到りて盡（つ）き、北は立山の麓に終る。

私は貴方から送って下さった校正刷五百八十頁（ページ）を今日漸く読み了りました。

茶の袴私が画学校に行っていた時、学校の古顔に前田玉英さんがいました。

コラムは三日のあいだ断食した。

根本的用意とは何か一概に文章といっても、その目的を異にするところから、幾多の種類を数えることが出来る。

東京の町に生れて、そして幾十年といふ長い月日をこゝに送つた………。

ネコがネズミと知りあいになりました。

ずっと前からＭ君にゴルフの仲間入りをすすめられ、多少の誘惑は感じているが、今日までのところでは頑強に抵抗して云う事を聞かないでいる。

よし子さんのお家も、あすは、クリスマスです。

この半年ばかりのうちに、私たちの生活におこった変化は、日本のこれまでのいつの歴史にもその例がないほど、激しいものです。