10分以内で読める青空文庫の短編作品（5ページ目）

「それで貴女とう／＼離婚れてしまいましたので……丁度、昨年の春の事で御座いました」「まーとう／＼。

人から受けた印象と云うことに就いて先ず思い出すのは、幼い時分の軟らかな目に刻み付けられた様々な人々である。

家康は重大な話のうちに、ひょいと、話を聞いていない顔をする癖があると、何かの書に見た。

僕達、阿佐ヶ谷に住んでゐる友人達が中心になつて、時時将棋の会を催すことがある。

同じ言葉でデモクラシーといつても、いろいろの型があつて、どうも一樣ではないやうだ。

赤羽の方へ話をしに行つた日は白つぽい春の埃が中空に舞ひ漂つてゐる日であつたが、その帰りに省線電車の長い席のいちばん端に私が腰掛けて向うの窓のそとのチカチカ光る空気にぼんやり眼をやつてゐるといふと、上中里か田端だつたかで、幼な子を背負つたひとりの若い女が入つてきて手には更に滅法ふくらんだ風呂敷をさげてをつた。

「柿田さん、なんでもかんでも貴方に被入しつて頂くやうに、私が行つて院長さんに御願ひして来て進げる――左様言つて、引受けて来たんですよ。

この一月の末に、足かけ四年ぶりに郷里の小豆島へ帰った。

アイヌ語やアイヌ文学を扱っていると、われわれの予想もしなかったような考え方にぶつかって戸惑いするのは毎度のことである。

顔を洗う水のつめたさが、一朝ごとに身に沁みて、いよいよつめたくなって来る頃である。

探偵小説に興味がないこともないが、常に忙しいのと、生来の怠け癖とで読めもしないのをコツコツ洋書を読む根気もないので、十分の確信をもつて探偵小説の話ができる訳のものではない。

アラスカ氷河の特徴アラスカの氷河は、景観の美しさという点では、世界第一といわれている。

庭暗い雨のふきつのる、あれはてた庭であつた。

私は汗を拭いた。

私が泉鏡花先生に初めてお眼にかかったのは、今から三十二、三年前の二十一歳の時でした。

私はフランス哲学にはドイツ哲学やイギリス哲学と異なった独得な物の見方考え方があると思う。

推理川柳とは、私が仮りにつけた名称であって、推理を含んだ川柳という意味である。

ａあなたは、勿論、エキストラって御存じでしょう。

芸術上でわれわれが常に思考する永遠という観念は何であろう。

常憲院實紀を見ると、寶永元年八月の處に女順禮多く打むれ市街を徘徊し、かつ念佛講と稱し、緇素打まじはり、夜中人多く挑燈をかゞけ往來するよし聞ゆ、いとひがことなり、今より後停禁たるべし。

『猫』の寒月君『三四郎』の野々宮さんの話の素材が吉村冬彦（寺田寅彦）先生から供給されたものであるという話は、前に書いた通りである。

元祿三年版枝珊瑚珠は江戸咄の元祖鹿野武左衞門を初め浮世繪師石川流宣等の噺を集めた物。

本因坊名人秀哉がまだ元気でいられたころだから昭和十年前後のこと。

雜誌「文藝」に發表した僕の評論（詩に告別した室生犀星君へ）は、意外にも文壇の人々に反響した。

輝元の築城広島城のことを鯉城というが、この鯉城というのはこの土地が己斐の浦に臨んでいたので、己斐が鯉の音に通じるところから、こう名付けられたものといわれる。

私は、晴れた日の青い海を見ると、なんとなく食慾をそそられるような思いがする。

黒ねこは、家の人たちが、遠方へ引っ越していくときに、捨てていってしまったので、その日から寝るところもなければ、また、朝晩食べ物をもらうこともできませんでした。

深い谿をへだてた小さな山の斜面に、ぽつぽつ新緑が目立ちはじめ、その山肌に明暗の模様をつくりながら、いくつかの雲の落す影が動いている。

月が岩かげを作った。

洗足池畔の私の家の向ひは、東京近郊の桜の名所である。

私が――これは私たちがと言つた方がいいのだ。

「旦那様、これは又大した古疵で御座いますが、――さぞ、お若い時分の、勇ましい思い出でも御座いましょう」「いや、そう言われると恥かしい、後ろ傷をと言うわけでは無いが、相手の刃物が伸びて、腰車を妙に背後へかけて斬られて居るから、人様の前でうっかり肌を脱ぐと、飛んだ変な目で見られることがある――」本所割下水に住んで居る、浪人者の原口作左衛門、フト呼び入れた年若い按摩に、腰骨へ斜に残った古疵を見付けられて、思わず赤面いたしました。

此前ノ御談會ニ嘗テ人ノ性理ヲ論ジ、之ヲ分チテ智情意ノ三部トナスコトヲ概論シタリ。

びんぼうな男が、子どもを十二人もっていました。

料理屋に、草津、一直、松島、大増、岡田、新玉、宇治の里がある。

前に村井弦斎のわた抜きあゆの愚を述べたが、あゆは名が立派だけにずいぶんいかがわしいものを食わせるところがある。

昔、京都に近い愛宕山に、黙想と読経に余念のない高僧があった。

※新聞社から放送局へ轉じて一番先に欲しくなつたのはラヂオ・セツトのいゝのである。

「明日ある大都市をして、包囲またはそれに類する何等かの災禍に襲わしめよ。

午前からの来診患者が一先づ絶えたので、先刻から庭木に鋏を入れてゐた医者が、今居間に帰つて来た所だ。

杜若の蔭に金魚が動いてゐる。

「それから」を脱稿したから取あへず前約を履行しやうと思つて「額の男」を讀んだ。

「あの、失礼ですが」なめらかな都会ふうの男の声がいった。

お茶漬けの話にかぎらないが、料理というものは、財力豊かな人のものと、財力不自由な人のものとでは、常に天と地ほどの相違がある。

夏目さんとは最近は会う機会がなかった。

この間の朝、裏の井戸端へ顔を洗いに行くと、近所の人に出会したので、「おはようごさいます。

＊おととしより去年、去年より今年と、一冬ごとに東京に殖えて来たものに河豚料理がある。

霧がじめじめ降っていた。

特殊部落の人達の口にする言語は、その付近の普通部落の言語と幾らか違ったところがある。

梅雨まへには、今年はきつと乾梅雨だらうといふことでしたが、梅雨に入つてからは、今日まで二度の雨で、二度ともよく降りました。