30分以内で読める伊丹万作の短編作品

最近、自由映画人連盟の人たちが映画界の戦争責任者を指摘し、その追放を主張しており、主唱者の中には私の名前もまじつているということを聞いた。

近ごろの世相は私に精神的呼吸困難を感じさせることが多い。

素姓中学時代の同窓にＮという頭のいい男がいた。

映画における音楽の位置をうんぬんするとき、だれしも口をそろえて重大だという。

寝台の上で、何を思いわずろうてみてもしようがないが、このたびの改革案が発表されたときは、やはり強くなぐられたような気がした。

数年来、映画をまったく見ていない私は、作品としての映画を批評する資格を持たない。

すでにある芸術を政治が利用して有効に役立てるということはいくらも例のあることであるが、政治の必要から新たにある種の芸術を生み出し、しかも短期間にそれを完成するというようなことはほとんど不可能なことで、いまだかつてそのようなことが芸術の歴史に記されたためしはない。

私は生れてからこのかた、まだ一度も国民として選挙権を行使したことがない。

だれかが私に映画界の七不思議を選定してみないかといったら、私は即座に四社連盟をあげる。

映画のことなら何でもよいから見計いで書けという命令であるが、私は天性頭脳朦朧、言語不明瞭、文章曖昧、挙動不審の人物であるからたちまちはたとばかりに当惑してしまう。