枕もとの障子に笹(ささ)の葉のかげがうつりました。
枕もとの障子に笹(ささ)の葉のかげがうつりました。
林の中に行つてみると、紅のいろをした美しい蛇いちごが生つてをります。
林の中に行つてみると、紅のいろをした美しい蛇いちごが生つてをります。
ちえ子さんは可愛らしい奇麗な児でしたが、勉強がきらいで遊んでばかりいるので、学校を何べんも落第...
ちえ子さんは可愛らしい奇麗な児でしたが、勉強がきらいで遊んでばかりいるので、学校を何べんも落第しました。
正ちゃんは、左ぎっちょで、はしを持つにも左手です。
正ちゃんは、左ぎっちょで、はしを持つにも左手です。
京都に行ったことのある人は、きっとそこの清水の観音様にお参りをして、あの高い舞台の上から目の下...
京都に行ったことのある人は、きっとそこの清水の観音様にお参りをして、あの高い舞台の上から目の下の京都の町をながめ、それからその向こうに青々と霞(かす)んでいる御所の松林をはるかに拝んだに違いありません。
さびしいいなかながら、駅の付近は町らしくなっていました。
さびしいいなかながら、駅の付近は町らしくなっていました。
むかし近江の国に田原藤太という武士が住んでいました。
むかし近江の国に田原藤太という武士が住んでいました。
熊さんは、砂浜の上にすわって、ぼんやりと海の方をながめていました。
熊さんは、砂浜の上にすわって、ぼんやりと海の方をながめていました。
もう、ひやひやと、身にしむ秋の風が吹いていました。
もう、ひやひやと、身にしむ秋の風が吹いていました。
兄さんの打った球が、やぶの中へ飛び込むたびに辰夫くんは、草を分けてそれを拾わせられたのです。
兄さんの打った球が、やぶの中へ飛び込むたびに辰夫くんは、草を分けてそれを拾わせられたのです。
必ず九時迄に来ると、云つて置きながら、十五分も過ぎてゐるのに、未だ叔父は来なかつた。
必ず九時迄に来ると、云つて置きながら、十五分も過ぎてゐるのに、未だ叔父は来なかつた。
一降り欲しいとのぞんだ夏の小雨が、終日降り続いて、街の柳に煙つたかとみると、もうそれは秋雨と呼...
一降り欲しいとのぞんだ夏の小雨が、終日降り続いて、街の柳に煙つたかとみると、もうそれは秋雨と呼ばなければならない。
むかし、世の中にいろんな神が――風の神や水の神や山の神などいろんな神が、方々にたくさんいた頃の...
むかし、世の中にいろんな神が――風の神や水の神や山の神などいろんな神が、方々にたくさんいた頃のこと、ある所に一人の長者が住んでいました。
後村上天皇さまの皇子さまに、寛成さまと申すお方がございました。
後村上天皇さまの皇子さまに、寛成さまと申すお方がございました。
正二くんは時計がほしかったので、これまでいくたびもお父さんや、お母さんに、買ってくださいと頼ん...
正二くんは時計がほしかったので、これまでいくたびもお父さんや、お母さんに、買ってくださいと頼んだけれども、そのたびに、「中学へ上がるときに買ってあげます。
若いがんたちが、狭い池の中で、魚をあさっては争っているのを見て、年とったがんが歎息をしました。
若いがんたちが、狭い池の中で、魚をあさっては争っているのを見て、年とったがんが歎息をしました。
あるところに金持ちがありまして、毎日退屈なものですから、鶏でも飼って、新鮮な卵を産まして食べよ...
あるところに金持ちがありまして、毎日退屈なものですから、鶏でも飼って、新鮮な卵を産まして食べようと思いました。
たいへんに、金をもうけることの上手な男がおりました。
たいへんに、金をもうけることの上手な男がおりました。
むかし、むかし、おじいさんとおばあさんがありました。
むかし、むかし、おじいさんとおばあさんがありました。
むかしあるところに一人の欲ばりの坊さんがおりました。
むかしあるところに一人の欲ばりの坊さんがおりました。
秋風が吹きはじめると、高原の別荘にきていた都の人たちは、あわただしく逃げるように街へ帰ってゆき...
秋風が吹きはじめると、高原の別荘にきていた都の人たちは、あわただしく逃げるように街へ帰ってゆきました。
風船球は、空へ上がってゆきたかったけれど、糸がしっかりととらえているので、どうすることもできま...
風船球は、空へ上がってゆきたかったけれど、糸がしっかりととらえているので、どうすることもできませんでした。
すがすがしい天気で、青々と大空は晴れていましたが、その奥底に、光った冷たい目がじっと地上をのぞ...
すがすがしい天気で、青々と大空は晴れていましたが、その奥底に、光った冷たい目がじっと地上をのぞいているような日でした。
炭焼きの勘太郎は妻も子も無い独身者で、毎日毎日奥山で炭焼竈(がま)の前に立って煙の立つのを眺め...
炭焼きの勘太郎は妻も子も無い独身者で、毎日毎日奥山で炭焼竈(がま)の前に立って煙の立つのを眺めては、淋しいなあと思っておりました。
なんでも、一本の木が大きくなると、その根のところに、小さな芽が生えるものであります。
なんでも、一本の木が大きくなると、その根のところに、小さな芽が生えるものであります。
バリカンが山の斜面を滑る橇のやうにスルスルと正吉の頭を撫でゝゆくと、針のやうな髪の毛はバラバラ...
バリカンが山の斜面を滑る橇のやうにスルスルと正吉の頭を撫でゝゆくと、針のやうな髪の毛はバラバラととび散つた。
太郎さんはお父さまから銀色にピカピカ光る空気銃を一梃頂きました。
太郎さんはお父さまから銀色にピカピカ光る空気銃を一梃頂きました。
町から、村へつづいている往来の片側に、一軒の小さなペンキ屋がありました。
町から、村へつづいている往来の片側に、一軒の小さなペンキ屋がありました。
北の故郷を出るときに、二羽の小鳥は、どこへいっても、けっして、ふたりは、はなればなれにならず、...
北の故郷を出るときに、二羽の小鳥は、どこへいっても、けっして、ふたりは、はなればなれにならず、たがいに助け合おうと誓いました。
花の咲く前には、とかく、寒かったり、暖かかったりして天候の定まらぬものです。
花の咲く前には、とかく、寒かったり、暖かかったりして天候の定まらぬものです。
季節が、冬から春に移りゆく時分には、よくこんなような静かな、そして、底冷えのする晩があるもので...
季節が、冬から春に移りゆく時分には、よくこんなような静かな、そして、底冷えのする晩があるものですが、その夜は、まさしくそんな夜でありました。
夜、銀座などを歩いていると、賑やかに明るい店の直ぐ傍から、いきなり真闇なこわい横丁が見えること...
夜、銀座などを歩いていると、賑やかに明るい店の直ぐ傍から、いきなり真闇なこわい横丁が見えることがあるでしょう。
春のころ、一度この谷間を訪れたことのあるしじゅうからは、やがて涼風のたとうとする今日、谷川の岸...
春のころ、一度この谷間を訪れたことのあるしじゅうからは、やがて涼風のたとうとする今日、谷川の岸にあった同じ石の上に降りて、なつかしそうに、あたりの景色をながめていたのであります。
露子さんは継子で、いつもお母さんからいじめられて泣いてばかりいました。
露子さんは継子で、いつもお母さんからいじめられて泣いてばかりいました。
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