書き出し
こんなことを何も僕は決して誇り気に誌すわけではないのであるが、今不図考へて見て男の友達でも女の友達でも――それはいつも極く少人数であるが、一度交際した人と、自分から先に離れたといふ記憶を持たない、つい口の慎しみがなくて親しむに伴れては喧嘩などをすることは屡々であるが、その場限りで二三日経つと悪いことは皆な忘れてしまふ。
初出
1936年
(「Home line(ホームライン) 春季臨時増刊号」玉置合名会社、1936(昭和11)年4月)
底本
「牧野信一全集第六巻」筑摩書房, 2003(平成15)年5月10日