書き出し
池に咲く菖蒲(あやめ)かきつばたの鏡に映る花二本ゆかりの色の薄むらさきか濃むらさきならぬ白元結きつて放せし文金の高髷も好みは同じ丈長の櫻(さくら)もやう淡泊として色を含む姿に高下なく心に隔てなく墻(かき)にせめぐ同胞はづかしきまで思へば思はるゝ水と魚の君さま無くは我れ何とせんイヤ汝(われ)こそは大事なれと頼みにしつ頼まれつ松の梢(こずゑ)の藤の花房かゝる主從の中またと有りや梨本何某といふ富家の娘に優子と呼ばるゝ容貌よし色白の細おもてにして眉は※(さゝや)(かすみ)[#「霞...
初出
1892年
(「武蔵野 第三編」今古堂、1892(明治25)年7月23日)
底本
「武蔵野 第三編」今古堂, 1892(明治25)年7月23日