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久生十蘭の全作品(2ページ目)

青空文庫で公開されている久生十蘭の全作品99篇を、おすすめ人気順で表示しています。

51〜99件 / 全99件
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床ずれがひどくなって寝がえりもできない。
第二次大戦がはじまった年の七月の午後、大電流部門の発送関係の器材の受渡しをするため、近くドイツに行くことになっていた大電工業の和田宇一郎が、会社の帰りに並木通りの「アラスカ」のバアへ寄ると、そこで思いがけなく豊川治兵衛に行きあった。
市ヶ谷加賀町から砂土原町のほうへおりる左内坂の途中に、木造建ての小さな骨董店がある。
川風「阿古十郎さん、まア、もうひとつ召しあがれ」「ごうせいに、とりもつの」「へへへ」「陽気のせいじゃあるまいな」「あいかわらず、悪い口だ。
秋が深くなって、朝晩、公園に白い霧がおりるようになった。
ある夏、阿曽祐吉という男が、新婚匆々の細君を携帯して、アルプスのシャモニーへ煙霞の旅としゃれたのはよかったが、合※(ごうきん)の夢もまだ浅い新妻が、ネヴェという質のわるい濡れ雪を踏みそくなって、底知れぬ氷河の割目に嚥みこまれてしまった。
魚釣談義神田小川町『川崎』という釣道具屋。
金の鱗(うろこ)看月も、あと二三日。
藤波友衛坊主畳を敷いた長二十畳で、部屋のまんなかに大きな囲炉裏が切ってある。
府中「……すみませんねえ。
宮ノ下のホテルを出たときは薄月が出ていたが、秋の箱根の天気癖で、五分もたたないうちに霧がかかってきた。
朝風呂阿古十郎ことアコ長。
恍(とぼ)けた手紙「……手紙のおもむき、いかにも承知。
初鰹「船でい」「おお、船だ船だ」「鰹をやれ、鰹をやれ」「運のいい畜生だ」「おうい、和次郎ぬし、船だぞい、おも舵だ」文久二年四月十七日、伊豆国賀茂郡松崎村の鰹船が焼津の沖で初鰹を釣り、船梁もたわむほどになって相模灘を突っ走る。
二の字の傷恒例の鶴御成は、いよいよ明日にせまったので、月番、北町奉行永井播磨守が、城内西の溜(たまり)で南町奉行池田甲斐守と道中警備の打ちあわせをしているところへ、「阿部さまが、至急のお召し」と、お茶坊主が迎えに来た。
花婿二十四日の亀戸天神様のお祭の夜からふりだした雨が、三十一日になっても降りやまない。
あぶれ駕籠「やけに吹きっつぁらしますね」「うるるる、これはたまらん。
左きき「こりゃ、ご書見のところを……」「ふむ」書見台から顔をあげると、蒼みわたった、鬢(びん)の毛のうすい、鋭い顔をゆっくりとそちらへ向け、「おお、千太か。
山川石亭先生が、蒼(あお)い顔をして入って来た。
お姫様「なんだ、なんだ、てめえら。
二十六夜待七月二十六日は二十六夜待で、芝高輪、品川、築地の海手、深川洲崎、湯島天神の境内などにはほとんど江戸じゅうの老若が日暮まえから押しだして月の出を待つ。
麻布竜土町の沼間家の広い客間に、その夜、大勢のひとが集まっていた。
角地争い六月十五日の四ツ半(夜の十一時)ごろ、浅草柳橋二丁目の京屋吉兵衛の家から火が出、京屋を全焼して六ツ(十二時)過ぎにようやくおさまった。
馬の尻尾「はて、いい天気だの」紙魚くいだらけの古帳面を、部屋いっぱいにとりちらしたなかで、乾割れた、蠅のくそだらけの床柱に凭れ、ふところから手の先だけを出し、馬鹿長い顎の先をつまみながら、のんびりと空を見あげている。
はやり物谷中、藪下の菊人形。
客の名札勝色定紋つきの羽二重の小袖に、茶棒縞の仙台平の袴を折目高につけ、金無垢の縁頭に秋草を毛彫りした見事な脇差を手挾んでいる。
夕立の客「……向島は夕立の名所だというが、こりゃア、悪いときに降りだした」「佐原屋は、さぞ難儀していることだろう。
まだ十時ごろなので、水がきれいで、明るい海底の白い砂に波の動きがはっきり映る。
しばらくね、というかわりに、左手を気取ったようすで頬にあて、微笑しながら、黙って立っている。
普賢菩薩のお白象チャッチャッチキチ、チャッチキチ、ヒイヤラヒイヤラ、テテドンドン……「夏祭だ」「夏祭だ」「天下祭でい」「御用祭だ」「練って来た、練って来た。
賜氷の節「これ、押すな、押すな。
……それは、三十四五の、たいへんおおまかな感じの夫人で、大きな蘭の花の模様のついたタフタを和服に仕立て、黄土色の無地の帯を胸さがりにしめているといったふうなかたです。
朱房銀※(しゅぶさぎんづか)の匕首源内先生は旅姿である。
十六日の朝景色薄い靄(もや)の中に、応挙風の朱盆のような旭(あさひ)がのぼり、いかにもお正月らしいのどかな朝ぼらけ。
新酒「……先生、お茶が入りました」「う、う、う」「だいぶと、おひまのようですね。
二日ほど前から近年にない強い北々風が吹き荒れ、今日もやまない。
キャラコさんは、ひろい茅原のなかに点綴するアメリカ村の赤瓦を眺めながら、精進湖までつづく坦々(たんたん)たるドライヴ・ウェイをゆっくりと歩いていた。
「兄さん、あたしは、困ったことになりはしないかと思うんですがね。
運送会社の集荷係が宅扱いの最後の梱包を運びだすと、この五年の間、宇野久美子の生活の砦だった二間つづきのアパートの部屋の中が、セットの組みあがらないテレビのスタジオのような空虚なようすになった。
第一回交換船霧のなかで夜が明けかけていた。
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