書き出し
子規子の世を去るなり、天下の操觚者ほとんど筆を揃(そろえ)てその偉人たることを称す、子規子はいかなる理由によって偉人と称せられたるか、世人が子規子を偉人とするところの理由いかんと見れば、人おのおのその言うところを異にし、毫(ごう)も帰一するところあるなく、しこうしてただその子規子は偉人なりという点においてのみ、一致せるの事実を見たるは最も味うべき点なりとす。
初出
1906年
(「馬醉木 第三卷第一號」1906(明治39)年1月1日)
底本
「子規選集 第十二巻 子規の思い出」増進会出版社, 2002(平成14)年11月5日