宮本百合子の全作品（5ページ目）

一九三三年ごろから最近までの十二、三年の間日本の文学者たちの経験したさまざまの苦しい境遇は、ほんとうに日本の全人民の辛苦と共通なものであった。

鴎外全集第二巻雲中語を読む。

かなりの復興したとはいっても、東京の街々はまだ焼あとだらけである。

今日などはもう随分暖い。

女のひとというものは道理がわからないものだ、そう思われるのが常識であった時代はすぎた。

この間田舎へかえる親戚のもののお伴をして珍しく歌舞伎座を観た。

最近のソヴェト文学をよみたくて読めなかった日本の読者に、ゴルバートフの「降伏なき民」はうれしいおくりものであった。

人類の祖先たちは、彼らの原始的な生活のもとで、どんなふうに自分たちの発見と智慧とをもちいてきたのだろう。

野沢富美子の作品集『長女』に収められている「長女」「陽のない屋根」「過失」などは、いずれも現代日本の庶民の生活の偽らず飾らない記録として読者に迫って来る一種の力を持っている。

どんなひとでも、はたからは、その人に似た人というものの話をきかされているだろうと思う。

六月某日。

芍薬「これ八百屋の店先にバケツにつけてあったの。

一面、かなり深い秋霧が降りて水を流した様なゆるい傾斜のトタン屋根に星がまたたく。

「禰宜様宮田」が、いつか単行本になる時があったら、是非云い添えたいと思っていたことを書きます。

もし私が肖像画家であったら、徳田球一氏を描くときどの点に一番苦心するだろうかと思う。

これからは男性とか女性とかいう風に相対的にものを考えることが少くなりましょう。

一般の婦人の勤労生活と毎月の生理的変化との関係が、新らしい注意で見られることは実によいと思う。

きょうは、うれしいニュースを、おつたえいたします。

十一月一日の各新聞のすみに、読者調整のカードがすりこまれていた。

国文学というものは、云わばこれから本当の生きた研究がされるのではないだろうか。

「水中の町」モチズキヨシ全体メロドラマ的にあつかわれすぎている。

「小説の書けぬ小説家」の後に、「汽車の罐焚き」を読むことが出来たのは、一つの心持よいことである。

人並みの苦心をすることは決して苦心とはいえないでしょう。

長さ三尺に高さ二尺六七寸の窓がある。

私たちのまわりでは、よく、自信があるとか、自信がないとかいう表現がされる。

『働く婦人』がまた発行されることになりました。

「現代日本小説大系」が刊行される意味は、ただ日本の近代文学をもう一遍よみかえし、検討し、将来の文学に寄与するという風な、すべてのこれまでの刊行会の挨拶の範囲では、使命が果されないと思う。

『輝ク』の慰問号を拝見して感じたことの第一は、人を慰める、特に平常と異った事情にある前線の将士を真実に慰めるということは、実に、むずかしいということです。

二、三日前の新聞に、北満の開拓移民哈達河開拓団二千名の人々が、敗戦と同時に日本へ引揚げて来る途中、反乱した満州国軍の兵に追撃され、四百数十名の婦女子が、家族の内の男たちの手にかかって自決させられたという記事がありました。

文学の歴史をみわたすと、本当に新しい意味で婦人が文学の活動に誘い出されて来たのは、いつも、人民の権利がいくらか多くなって、すべての人が自分の考えや感じを表現してよいのだ、という確信を得た時代であった。

人類が、生命の本然によりて掛ける祈願の前に、私共は謙譲であり、愛に満ちてありたい。

六十八歳になられた作家森田草平氏が入党されたということは、多くの人にいろいろと語りかけるいみを持っています。

大地は大変旧いものだ。

日本の文学と文学者とは、最近数年の間に極めて容赦のない過程で、政治というものについて、目をさまされて来た。

昨夜、ドッドと降って居た雨が朝になってすっかり上った。

日本女性の参政二年を記念して、去る十日にマッカーサー元帥が発したステートメントの言葉は大変に美しく、日本婦人の理想の姿を描き出していたと思います。

有島さんの死は余りに私にとっては大きな事柄なので、この場合それに対して批判するというような気持になっていません。

一年ばかり前、ある雑誌にマクシム・ゴーリキイの今日までの生涯について伝記的な側から短いものを書いたことがあった。

派出婦さんが、だんだん顔をあげて私を見て、笑顔になってものを云うようになった。

「どうもめっきりよわったもんだ」男は枯木の様に血の色もなく、力もなく、只かすかに、自分の足と云うだけの感じは有る二本の足をつめながら一人ごとを云う。

明日の女らしさ、男らしさ。

若い息子は、革命は不可避であるという自由主義的インテリゲンツィアの認識を基本としているものである。

この頃の新緑の美しさ。

冬の日の静けさは何となく一種異った感じを人に与える。

現代のソヴェト・ロシア一般の社会現象及び芸術について話す場合、当然現在第三年目に入ったソヴェト生産拡張五ヵ年計画を根柢に於て見なければならない。

これまで、今時分の東京の乾物屋の店先にこんなに種々様々にあしらわれて鰊（にしん）が並んだことがあっただろうか。

細い雨足で雨が降って居る。

国民の文化生活が、個人的な方法で向上を計られて来たこれまでとちがって、これからは個々の経済力の相違に余り大きい支配をうけないやりかたで、国全体の文化の質が高められて行くようになることを皆が希望していると思う。

『輝ク』を今日拝見していろいろ面白く感じ、同時に相すまなく感じました。

此度山田さんの自伝的小説『地上に待つもの』が出版されるに当って、何人かの友人らに混って短い感想を書く因縁に立ち到ったことを私は一種の感動をもって考えるのである。