30分以内で読める宮本百合子の短編作品（3ページ目）

この頃は、日本じゅうのあちらこちらの都会を中心として、文化的な動きが著しくなって来ている。

十一月の中旬に、学友会の雑誌が出る。

今日、私たちが文学に求めているものは何であろう。

うちを出て、もよりの省線の駅までゆく途中の焼跡にも、この頃はいろいろの露店が出はじめた。

絶対主義と戦争熱で正気をうしなっていた日本の政府が無条件降伏して、ポツダム宣言を受諾したのはつい一昨昨年の夏のことであった。

去る二月二十日、暴虐なる天皇制テロルによって虐殺されたわがプロレタリア文化・文学運動の卓抜なる指導者、組織者、国際的規模におけるボルシェヴィク作家、同志小林多喜二の全国的労農葬は、プロレタリアの恨みの日三・一五記念日を期して敵の弾圧に抗し、東京はじめ各地において敢行された。

このごろはどこへ行っても列がある。

これまで主として詩、評論の仕事をしてきた窪川鶴次郎が、今度『中央公論』に発表した小説「風雲」については、きっとさまざまの人の批評があるであろうと思う。

きょう、この会に出席して、みなさまにお目にかかれないのを、ほんとうに残念に思います。

プロレタリア文化・文学運動の指導者、卓抜な国際的ボルシェヴィク作家同志小林多喜二の虐殺［＃「虐殺」に×傍点、伏字を起こした文字］は、社会の広汎な分野に亙って少なからぬ震撼を与えた。

今日、日本は全面的な再出発の時機に到達している。

高札いつも通る横丁があって、そこには朝鮮の人たちの食べる豆もやし棒鱈類をあきなう店だの、軒の上に猿がつながれている乾物屋だの、近頃になって何処かの工場の配給食のお惣菜を請負ったらしく、見るもおそろしいような烏賊を賑やかに家内じゅう総がかりで揚げものにしている蒲焼の看板をかけた店だのというものが、狭い道に溢れて並んでいる。

去年の秋、日本プロレタリア作家同盟はその中央常任委員会に属する一つの文学的活動機能として婦人委員会を設けた。

部屋宮本百合子二階受持のさを［＃「さを」に傍点］が、障子の陰から半分顔を出し、小さい声で囁いた。

墓宮本百合子幾枝はすっかり体を二重に曲げ、右の肱を膝にかって、良人の鼻の上に酸素吸入のカップを当てがっていた。

河原蓬と云う歌めいた響や、邪宗の僧、摩利信乃法師等と云う、如何にも古めかしい呼名が、芥川氏一流の魅力を持って、私の想像を遠い幾百年かの昔に運び去ると同時に、私の心には、又何とも云えないほど、故国の薫りが高まって来た。

私がマクシム・ゴーリキイに会ったのは、ちょうど今から足かけ八年前の一九二八年の初夏のことであった。

炉ばたのゴザのこっち側で、たけをが箱膳を膝の前に据え、古漬けの香のもので麦七分の飯をかっこんでいる。

いま、私の机の上に二冊の本がのっている。

この集には「冬を越す蕾」につづいて一九三七年（昭和十二年）から一九四一年（昭和十六年）のはじめまでに執筆された文芸評論があつめられている。

網野さんの小説集『光子』が出たとき私共はよろこび、何か心ばかりの御祝でもしたいと思った。

一九三〇年九月×日。

津軽の虫の巣宮本百合子朗らかな秋晴れの日である。

私たちが、或るひとつの言葉からうける感じは、実に微妙、複雑なものだと、びっくりする。

私たちが、恋愛とか結婚とかの問題について話す場合、特別その上に新しいという形容詞をつけて持ち出す場合、それは多かれ少かれ、従来理解され、また経験されて来た恋愛や結婚より何かの意味で豊富な、新鮮な、我々の生きる歓喜となり得るものを求めようとする心持が働いていると思う。

佳一は、久しぶりで大岡を訪ねた。

この間或る必要から大変おくればせに石坂洋次郎氏の「若い人」上下を通読した。

三四年前、いろいろなところで青年論がされたことがあった。

一九四三年だったかそれともその翌年だったか、ある夏のことであった。

光のない朝宮本百合子おもんが、監督の黒い制服を着、脊柱が見えそうに痩せさらぼいた肩をかがめて入って来ると、どんな野蛮な悪戯（いたずら）好きの女工も、我知らずお喋りの声を止めてひっそりとなった。

現代ヨーロッパ文学には、ラジオや飛行機が様々の形でとりいれられ、スピードや空間の征服やそれによる人間の心理の複雑化などが語られている。

『女性日本人』の編輯に従事して居られるＹ氏が見え、今度同誌で、各異る年代にある人々の、年齢感ともいうべきものを蒐集されるまま私は非常に興味あり、また有益なことだと思います。

さきごろ中野重治が二つの短いアレゴリーを『改造』へ書いた。

最近、計らずも身辺近く見た或る婦人の境遇が、自分に種々の事を考えさせました。

月の冴えた十一月の或る夜である。

「見る人のこころごころの秋の月」という文句がある。

自分に与えられたほんとの課題は、ソヴェト生産拡張五箇年計画と芸術との関係について、ちょっと簡単に書いて貰えますまいか、というのだった。

昔から女にもとめられている日常の美徳の一つに、ものわかりのよさ、ということがある。

世の中が急に動いてゆく。

私たちの毎日の生活の間では、文化という言葉と文明という言葉とがある時には同じ内容をもつ表現のようにつかわれている場合があり、そうかと思うと文化文明と二つの文字を重ねてその間におのずから異った意味がふくまれているものとして使われている場合がある。

今日、日本の民主化の課題に対して、日本のインテリゲンツィアが感じている最も大きい困難は、どういう性質のものだろうか。

考えて見ると、私は今日まで作家として相当長い仕事の間に、自分の作品または生活について書かれるいろいろな批評などに対して、文章をもって答えたことは、ごく稀であった。

九月一日の夕刊に、物々しい防空演習の写真と一緒に市電整理案が発表された。

先日はどうも失礼。

すみ子さん、こんにちは！今日は湯浅さんとふたりで、珍しいところを見て来たから、忘れないうちにそのことを書きます。

日本の新しい出発にとって意義深い総選挙は、四月十日に行われ、十五日までには全国の成果が知らされた。

猿宮本百合子人物ヨハネス（十八歳）エッダ（十六歳）エッダの母親（四十歳前後）場所デンマークの片田舎時或る秋幕開く第エッダの家の中下手に、大きな鉄の蝶番（ちょうつがい）の付いた木の大扉、開け放してあり、傍の壁の三段の棚の上には、上部に大小の皿、下段には、鑵、硝子瓶その他、料理用の小道具が置いてある。

古典摂取の態度この間、ある人に会ったら、こういう話が出た。

現代の日本の作家の中で、その作品に最も多く自然をうけ入れ、示しているのは誰であろう。

去年の八月頃のことであった。