ブンゴウサーチ
児童書版
TOP 野村胡堂 全作品

野村胡堂の全作品(8ページ目)

青空文庫で公開されている野村胡堂の全作品405篇を、おすすめ人気順で表示しています。

351〜400件 / 全405件
Tweet
作品名
著者
読了時間
人気
「八、花は散り際つて言ふが、人出の少くなつた向島を、花吹雪を浴びて歩くのも惡くねえな」錢形平次は如何にも好い心持さうでした。
「八、あの巡礼を跟(つ)けてみな」平次は顎をしゃくって見せました。
「親分、松が取れたばかりのところへ、こんな話を持込んじゃ気の毒だが、玉屋にとっては、この上もない大難、――聴いてやっちゃ下さるまいか」町人ながら諸大名の御用達を勤め、苗字帯刀まで許されている玉屋金兵衛は、五十がらみの分別顔を心持翳(かげ)らせてこう切出しました。
「親分、あつしの身體が匂やしませんか」ガラツ八の八五郎が、入つて來ると、いきなり妙なことを言ふのです。
「八、花は散り際って言うが、人出の少なくなった向島を、花吹雪を浴びて歩くのも悪くねえな」銭形平次はいかにも好い心持そうでした。
銭形平次が門口の雪をせっせと払っていると、犬っころのように雪を蹴上げて飛んで来たのはガラッ八の八五郎でした。
「あツ、ヒ、人殺しツ」宵闇を劈(つんざ)く若い女の聲は、雜司ヶ谷の靜まり返つた空氣を、一瞬、※(むし)えこぼれるほど掻き立てました。
「八、身体が暇かい」銭形平次は、フラリと来たガラッ八の八五郎をつかまえました。
八五郎は獨りで、向島へ行つた歸り、まだ陽は高いし、秋日和は快適だし、赤トンボに誘はれるやうな心持で、フラフラと橋場の渡し舟に乘つて居りました。
「あッ、ヒ、人殺しッ」宵闇を劈(つんざ)く若い女の声は、雑司ヶ谷の静まり返った空気を、一瞬、煮えこぼれるほど掻き立てました。
銭形平次の見ている前で、人間が一人殺されたのです。
「八、良い月だなア」「何かやりましょうか、親分」「止してくれ、手前が塩辛声を張り上げると、お月様が驚いて顔を隠す」「おやッ、変な女が居ますぜ」銭形の平次が、子分のガラッ八を伴れて両国橋にかかったのは亥刻(十時)過ぎ。
「わツ驚いた、ドブ板が陷穴になつて居るぜ。
「妙なことを頼まれましたよ、親分」ガラッ八の八五郎、明神下の平次の家へ、手で格子戸を開けて――これは滅多にないことで、大概は足で開けるのですが――ニヤリニヤリと入って来ました。
「へッ、へッ、可笑しなことがありますよ、親分」「何が可笑しいんだ。
「親分、泥棒は物を盗るのが商売でしょう」八五郎のガラッ八はまた変なことを言い出しました。
「ヘッヘッ、ヘッ、ヘッ、近頃は暇で暇で困りゃしませんか、親分」「馬鹿だなア、人の面を見て、いきなりタガが外れたように笑い出しやがって」「でも、銭形の親分ともあろう者が、日向にとぐろを巻いて、煙草の煙を輪に吹く芸当に浮身をやつすなんざ天下泰平じゃありませんか。
「親分、驚いちやいけませんよ」毎日江戸中のニユースを掻き集めて、八丁堀の組屋敷から、南北兩町奉行所まで、萬遍なく驅け廻らなきや、足がムズムズして寢つかれないといふ、小判形の八五郎こと、一名順風耳のガラツ八です。
「八、まあそこへ坐れ、今日は真面目な話があるんだ」「ヘエ――」八五郎のガラッ八は、銭形平次の前に、神妙らしく膝小僧を揃えました。
「親分、どうなすったんで?」ガラッ八の八五郎は、いきなり銭形平次の寝ている枕許に膝行り寄りました。
「親分、変なことがあるんだが――」ガラッ八の八五郎が、少し鼻の穴を脹らませて入って来ました。
「親分、長い間お世話になりましたが――」八五郎はいきなり妙なことを言ひ出すのです。
「親分、凄いのが來ましたぜ。
「親分、お願いがあるんですが――」お品はこう切り出します。
公儀御用の御筆師、室町三丁目の「小法師甲斐」は、日本橋一丁目の福用、常盤橋の速水と相並んで繁昌しましたが、わけても小法師甲斐は室町の五分の一を持っているという家主で、世間体だけはともかくも、大層な勢いでした。
「親分、笑つちやいけませんよ」ガラツ八の八五郎が、いきなりゲラゲラ笑ひながら親分の錢形平次の家へ入つて來たのでした。
銭形平次もこんな突拍子もない事件に出っくわしたことはありません。
深川の材木問屋春木屋の主人治兵衛が、死んだ女房の追善に、檀那寺なる谷中の清養寺の本堂を修理し、その費用三千両を釣台に載せて、木場から谷中まで送ることになりました。
江戸開府以來の捕物の名人と言はれた錢形の平次は、春の陽が一杯に這ひ寄る貧しい六疊に寢そべつたまゝ、紛煙草をせゝつて遠音の鶯(うぐひす)に耳をすまして居りました。
屑屋の周助が殺されました。
「親分、御存じでせうね、あの話を」ガラツ八の八五郎が、獨り呑込みの話を持込んで來ました。
蜘蛛の糸「今晩はまったくすばらしかったよ。
「親分、大變ツ」日本一の淺黄空、江戸の町々は漸く活氣づいて、晴がましい初日の光の中に動き出した時、八五郎はあわてふためいて、明神下の平次の家へ飛び込んで來たのです。
發端篇「親分、大變ツ」八五郎の大變が、神田明神下の錢形平次の家へ飛び込んで來たのは、その晩もやがて亥刻半(十一時)近い頃でした。
「あ、錢形の兄さん」平次は兩國橋の上で呼留められました。
【第一回】その晩、出雲屋の小梅の寮は、ハチ切れそうな騒ぎでした。
【第一回】運座の帰り、吾妻屋永左衛門は、お弓町の淋しい通りを本郷三丁目の自分の家へ急いで居りました。
【第一回】「世の中に何が臆病と言ったって、二本差の武家ほど気の小さいものはありませんね」八五郎はまた、途方もない哲学を持ち込んで来るのです。
【第一回】「親分は、恋の病というのをやったことがありますか」ガラ八の八五郎は、大した極りを悪がりもせずに、人様にこんなことを訊(き)く人間だったのです。
【第一回】その頃江戸中を荒した、凶賊黒旋風には、さすがの銭形平次も全く手を焼いてしまいました。
【第一回】「親分、近頃は滅多に両国へも行きませんね」八五郎は相変らず何んかネタを持って来た様子です。
「親分は、戀の病ひといふのをやつたことがありますか」ガラツ八の八五郎は、たいして極りを惡がりもせずに、人樣にこんなことを訊く人間だつたのです。
【第一回】「親分、世の中にこの綺麗なものを見ると痛めつけたくなるというのは、一番悪い量見じゃありませんか、ね」八五郎が入って来ると、いきなりお先煙草を五、六服、さて、感に堪えたように、こんなことを言い出すのです。
【第一回】江戸八百八町が、たった四半刻のうちに洗い流されるのではあるまいか――と思うほどの大夕立でした。
【第一回】「親分、ありゃ何んです」観音様にお詣りした帰り、雷門へ出ると、人混みの中に大変な騒ぎが始まって居りました。
父の汚名を雪ぐ――大事な使命「お嬢様、大急ぎで鎌倉の翠川様の別荘へいらしって下さい」「どうしたの、爺や」「どうもしませんが、夏休になったら、泊りにいらっしゃるお約束じゃございませんでしたか」「でも、爺や一人で不自由な事はない?」「私はもう六十八ですもの、どんな事があったって驚きやしません」「まア、なんかあったの爺や」立花博士の遺児、今年十四になる綾子は、呆気に取られて正平爺やの顔を見詰めました。
夜の編輯局「勇、一杯つき合わないか、ガード下のお光っちゃんは、怨んで居たぞ、――近頃早坂さんは、何処か良い穴が出来たんじゃないかって――」古参の外交記者で、十年も警視庁のクラブの主にされて居る虎井満十が、編輯助手の卓の上へ、横合から薄禿げた頭を突き出して斯(こ)んなことを言うのです。
「親分、この世の中といふものは――」愛稱ガラツ八の八五郎が、お先煙草を五匁ほど燻(くん)じて、鐵瓶を一パイ空つぽにして、さてこんな事を言ひ出すのです。
マークのついた作品は著作権が存続しています。 詳細は 青空文庫公式サイトの取り扱い基準 をご確認のうえ、取り扱いの際は十分注意してください。