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60分以内で読める野村胡堂の中編作品(6ページ目)

青空文庫で公開されている野村胡堂の作品の中で、おおよその読了目安時間が「60分以内」の中編318作品を、おすすめ人気順に表示しています。

(12,001〜24,000文字の作品を対象としています。読了時間は「400字/分」の読書スピードで計算した場合の目安です)
251〜300件 / 全318件
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「親分、世の中はだんだん悪くなって来ますね」ガラッ八の八五郎は妙なことを言い出しました。
相変らず捕物の名人の銭形平次が、大縮尻をやって笹野新三郎に褒められた話。
「親分、近頃金の要るようなことはありませんか」押詰ったある日、銭形平次のところへノッソリとやって来たガラッ八の八五郎が、いきなり長い顎を撫(な)でながら、こんなことを言うのです。
「親分、良い陽気ですね」フラリとやって来た八五郎は、襟の汗を拭いて、お先煙草を五六服、お茶をガブ呑みの、継穂もないお世辞を言うのでした。
「親分、向うの角を左へ曲りましたぜ」「よしッ、手前はここで見張れ、俺は向うへ廻って、逆に引返して来る」平次とガラッ八は、近頃江戸中を荒し廻る怪盗、――世間で「千里の虎」というのを、小石川金杉水道町の路地に追い込んだのです。
「親分、お早やうございます」八五郎はいつになく几帳面に格子戸を開けて入つて來ました。
「親分、良い陽氣ですね」ガラツ八の八五郎が、鼻の頭から襟へかけての汗を、肩に掛けた手拭の端つこで拭きながら、枝折戸を足で開けて、ノツソリと日南に立ちはだかるのでした。
「親分、金儲けを好きですか」ガラツ八の八五郎、また飛んでもないことを言ひ出すのです。
「親分、近頃は胸のすくような捕物はありませんね」ガラッ八の八五郎は先刻から鼻を掘ったり欠伸をしたり、煙草を吸ったり全く自分の身体を持て余した姿でした。
「親分、美い新造が是非逢わしてくれって、来ましたぜ」とガラッ八の八五郎、薄寒い縁にしゃがんで、柄にもなく、お月様の出などを眺めている銭形の平次に声を掛けました。
「親分、美い新造が是非逢はしてくれつて、來ましたぜ」とガラツ八の八五郎、薄寒い縁にしやがんで、柄にもなく、お月樣の出などを眺めてゐる錢形の平次に聲を掛けました。
「親分の前だが、あつしも今度ばかりは、二本差が羨ましくなりましたよ」ガラツ八の八五郎は、感にたへた聲を出すのでした。
「親分、お早う」ガラッ八の八五郎は、顎をしゃくってニヤリとしました。
「親分變なことを訊くやうですがね」ガラツ八の八五郎は、こんな調子できり出しました。
「親分、大変な野郎が来ましたぜ」ガラッ八の八五郎は、拇指で自分の肩越しに指しながら、入口の方へ顎をしゃくってみせます。
三田四國町の大地主、老木屋勝藏の養父で今年六十八になる八郎兵衞は、その朝隱居所の二階で、紅に染んだ死骸になつて發見されました。
「親分、近頃江戸にも、變なお宗旨があるんですつてね」ガラツ八の八五郎、何を嗅ぎ出したか、小鼻を膨らませて、庭口からノソリと入つて來ました。
「親分、あつしのところへ、居候が來ましたよ」八五郎がまた、妙な報告を持つて來ました。
「へツ、へツ、へツ、親分」ある朝、八五郎が箍(たが)の外れた桶(をけ)見たいに、笑ひながら飛び込んで來ました。
「親分は源氏ですか、それとも平家ですか」ガラツ八の八五郎は、いきなりそんなことを言ふのです。
「親分、退屈だね」ガラッ八の八五郎は、鼻の穴で天文を観るような恰好を取りました。
深川熊井町の廻船問屋板倉屋万兵衛、土蔵の修復が出来上がったお祝い心に、出入りの棟梁佐太郎を呼んで、薄寒い後の月を眺めながら、大川を見晴らした、二階座敷で呑んでおりました。
「親分、笑っちゃいけませんよ」「嫌な野郎だな、俺の面を見てニヤニヤしながら、いきなり笑っちゃいけねえ――とはどういうわけだ」銭形平次とガラッ八の八五郎は、しばらく御用の合間を、こう暢気な心持で、間抜けな掛合噺のような事を言っているのが、何よりの骨休めだったのです。
「親分、何をして居なさるんで?」ガラツ八の八五郎は、庭口からヌツと長い顎を出しました。
「親分、とうとう神田へ入って来ましたぜ」「何が?風邪の神かい」その頃は江戸中に悪い風邪が流行って、十二月頃から、夜分の人出がめっきり少なくなったと言われておりました。
「八、今のはなんだい」「ヘエ――」銭形の平次は、後ろから跟(つ)いて来る、八五郎のガラッ八をふり返りました。
「わツ驚いたの驚かねえの」ガラツ八といふ安値な異名で通る八五郎は、五月の朝の陽を一パイに浴びた格子の中へ、張板を蹴飛ばして、一陣の疾風のやうに飛び込むのでした。
「親分、折入つてお願ひがあるんですが」ガラツ八の八五郎は、柄にもなく膝小僧を揃へて、斯う肩を下げ乍ら、小笠原流の貧乏搖ぎをやつて見せるのでした。
「親分、日本橋の騷ぎを御存じですかえ」「知らないよ。
「親分、松が除れたばかりのところへ、こんな話を持込んぢや氣の毒だが、玉屋に取つては、此上もない大難、――聽いてやつちや下さるまいか」町人乍ら諸大名の御用達を勤め、苗字帶刀まで許されてゐる玉屋金兵衞は、五十がらみの分別顏を心持翳(かげ)らせて斯う切出しました。
その日、三河屋に集まった客は四人、将棋にも碁にも飽きて、夕刻からは埒(らち)もない雑談に花が咲きました。
「親分、何をしていなさるんで?」ガラッ八の八五郎は、庭口からヌッと長い顎を出しました。
「親分、面白くてたまらないという話を聞かせましょうか」ガラッ八の八五郎は、膝っ小僧を気にしながら、真四角に坐りました。
「親分の前だが、この頃のように暇じゃやりきれないね、ア、ア、ア、ア」ガラッ八の八五郎は思わず大きな欠伸をしましたが、親分の平次が睨(にら)んでいるのを見ると、あわてて欠伸の尻尾に節をつけたものです。
鼻観外道「この話の面白さに比べると、失礼だが今まで語られた奇談は物の数でもない、――と言うと、アラビアン・ナイトのお妃の極り文句のようですが、私は全くそう信じ切って居るのです」奇談クラブの集合室で、話の競技の第五番目に選手として立った春藤薫は、十三人の会員達の好奇に燃ゆる顔を見渡し乍ら、斯う言った調子で始めました。
「八、花は散り際つて言ふが、人出の少くなつた向島を、花吹雪を浴びて歩くのも惡くねえな」錢形平次は如何にも好い心持さうでした。
「八、あの巡礼を跟(つ)けてみな」平次は顎をしゃくって見せました。
「親分、松が取れたばかりのところへ、こんな話を持込んじゃ気の毒だが、玉屋にとっては、この上もない大難、――聴いてやっちゃ下さるまいか」町人ながら諸大名の御用達を勤め、苗字帯刀まで許されている玉屋金兵衛は、五十がらみの分別顔を心持翳(かげ)らせてこう切出しました。
「親分、あつしの身體が匂やしませんか」ガラツ八の八五郎が、入つて來ると、いきなり妙なことを言ふのです。
「八、花は散り際って言うが、人出の少なくなった向島を、花吹雪を浴びて歩くのも悪くねえな」銭形平次はいかにも好い心持そうでした。
銭形平次が門口の雪をせっせと払っていると、犬っころのように雪を蹴上げて飛んで来たのはガラッ八の八五郎でした。
「あツ、ヒ、人殺しツ」宵闇を劈(つんざ)く若い女の聲は、雜司ヶ谷の靜まり返つた空氣を、一瞬、※(むし)えこぼれるほど掻き立てました。
「八、身体が暇かい」銭形平次は、フラリと来たガラッ八の八五郎をつかまえました。
八五郎は獨りで、向島へ行つた歸り、まだ陽は高いし、秋日和は快適だし、赤トンボに誘はれるやうな心持で、フラフラと橋場の渡し舟に乘つて居りました。
「あッ、ヒ、人殺しッ」宵闇を劈(つんざ)く若い女の声は、雑司ヶ谷の静まり返った空気を、一瞬、煮えこぼれるほど掻き立てました。
銭形平次の見ている前で、人間が一人殺されたのです。
「八、良い月だなア」「何かやりましょうか、親分」「止してくれ、手前が塩辛声を張り上げると、お月様が驚いて顔を隠す」「おやッ、変な女が居ますぜ」銭形の平次が、子分のガラッ八を伴れて両国橋にかかったのは亥刻(十時)過ぎ。
「わツ驚いた、ドブ板が陷穴になつて居るぜ。
「妙なことを頼まれましたよ、親分」ガラッ八の八五郎、明神下の平次の家へ、手で格子戸を開けて――これは滅多にないことで、大概は足で開けるのですが――ニヤリニヤリと入って来ました。
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