ブンゴウサーチ
児童書版
TOP 野村胡堂 中編(60分以内)

60分以内で読める野村胡堂の中編作品(5ページ目)

青空文庫で公開されている野村胡堂の作品の中で、おおよその読了目安時間が「60分以内」の中編318作品を、おすすめ人気順に表示しています。

(12,001〜24,000文字の作品を対象としています。読了時間は「400字/分」の読書スピードで計算した場合の目安です)
201〜250件 / 全318件
Tweet
作品名
著者
読了時間
人気
プロローグ「女は全く謎の塊のようなものですね」奇談クラブの談話室――例の海の底のような幽幻な光の中で、第四番目の話の選手、望月晃は斯う始めました。
「泥棒の肩を持つのは穏かではないな」唐船男爵は、心持その上品な顔をひそめて、やや胡麻塩になりかけた髭に、葉巻の煙を這わせました。
「永い間こんな稼業をしているが、変死人を見るのはつくづく厭(いや)だな」捕物の名人銭形の平次は、口癖のようにこう言っておりました。
「親分、死んだ人間が手紙を書くものでせうか」あわて者のガラツ八は、今日もまた變梃(へんてこ)なネタを嗅ぎ出して來た樣子です。
「親分、お早うございます」「あれ、大層行儀がよくなつたぢやないか、八」錢形平次は膽をつぶしました。
名人大六雲鼎「人形の首を梟(さら)した、――という話、気味は悪いが、充分に面白い積りです」第六番目に立った話の選手大滝左馬太は、奇談クラブの談話室で、斯う話し始めました。
ガラッ八の八五郎が、両国の水茶屋朝野屋の様子を、三日つづけて見張っておりました。
「親分、東両国にたいそうな小屋が建ちましたね。
その晩、代地のお秀の家で、月見がてら、お秀の師匠に当る、江戸小唄の名人十寸見露光の追善の催しがありました。
温かい、香ばしい芙蓉(ふよう)の花弁が、そっと頬に触れた――。
「へツ、へツ、親分え」ガラツ八の八五郎は、髷節で格子戸をあけて、――嘘をつきやがれ、髷節ぢや格子は開かねえ、俺のところは家賃がうんと溜つて居るから、表の格子だつて、建て付けが惡いんだからと――、錢形の平次は言やしません。
かねやすまでを江戸のうちと言った時代、巣鴨や大塚はそれからまた一里も先の田舎で、田も畑も、武蔵野のままの木立も藪(やぶ)もあった頃のことです。
「八、大層ソワ/\してゐるぢやないか」錢形平次は煙草盆を引寄せて、食後の一服を樂しみ乍ら、柱に凭(もた)れたまゝ、入口の障子を開けて、眞つ暗な路地ばかり眺めてゐる、八五郎に聲を掛けました。
「おや、八五郎親分、もう御存じで?」「知らなくってさ。
「親分、今日は、良い陽氣ですぜ。
「ウーム」加賀屋勘兵衞は恐ろしい夢から覺めて、思はず唸(うな)りました。
相模屋の若旦那新助は二十一、古い形容ですが、日本橋業平といわれる好い男のくせに、去年あたりからすっかり、大弓に凝ってしまって、大久保の寮に泊り込みのまま、庭の※(あずち)で一日暮すことの方が多くなりました。
「又出ましたよ、親分」八五郎は飛び込んで來るのです。
「親分、向島の藤屋の寮で、今日生き葬ひがあるさうですね」ガラツ八の八五郎は、相變らず鼻をヒクヒクさせながらやつて來ました。
芝三島町の学寮の角で、土地の遊び人疾風の綱吉というのが殺されました。
「親分、この頃妙なものが流行るさうですね」八五郎がそんな話を持込んで來たのは、三月半ばの、丁度花もおしまひになりかけた頃、浮かれ氣分の江戸の町人達も、どうやら落着きを取戻して、仕事と商賣に精を出さうと言つた、殊勝な心掛になりかけた時分でした。
「親分、面白い話があるんだが――」八五郎のガラッ八が、長い顎を撫(な)でながら入って来たのは、正月の十二日。
「ね、お前さん」女房のお靜は、いつにもなく、突きつめた顏をして、茶の間に入つて來るのでした。
「もう宜いかい」「まアだゞよ」子供達はまた、隱れん坊に夢中でした。
「あつしはつく/″\世の中がイヤになりましたよ、親分」八五郎は柄にもなく、こんなことを言ひ出すのです。
菊屋傳右衞門の花見船は、兩國稻荷の下に着けて、同勢男女十幾人、ドカドカと廣小路の土を踏みましたが、「まだ薄明るいぢやないか、橋の上から、もう一度向島を眺め乍(なが)ら、一杯やらう」誰やらそんなことを云ふと、一日の行樂をまだ堪能し切れない貪婪な享樂追及者達は、「そいつは一段と面白からう、酒が殘つて居るから、瓢箪(へうたん)に詰めて、もう一度橋の上に引返さう、人波に揉まれ乍ら、欄干の酒盛なんざ洒落れて居るぜ」そんな事を言ひ乍ら、氣を揃へて橋の...
「あッ危ねえ」銭形の平次は辛くも間に合いました。
谷中三崎町に、小大名の下屋敷ほどの構へで、界隈を睥睨(へいげい)してゐる有徳の町人丁子屋善兵衞。
紅葉はちょうど見ごろ、差迫った御用もない折を狙って、銭形平次は、函嶺(はこね)まで湯治旅と洒落ました。
「親分は、本当に真面目に聞いて下さるでしょうか、笑っちゃ嫌でございますよ」「藪(やぶ)から棒に、そんな事を言っても判りゃしません。
「あ、あ、あ、あ、あ」ガラッ八の八五郎は咽喉仏の見えるような大欠伸をしました。
江戸の大通、札差百九人衆の筆頭に据えられる大町人、平右衛門町の伊勢屋新六が、本所竪川筋の置材木の上から、百両もする金銀象眼の※竿(たなござお)を垂れているところを、河童に引込まれて死んだという騒ぎです。
「勇、電話だよ」と社会部長の千種十次郎が怒鳴ると、「おッ、今行くぞ、どうせ市内通報員だろう」「いや、そんなものじゃ無い、早坂勇さんとはっきりお名差しだ」「月賦の洋服屋にしては少し時刻が遅いね」無駄を言い乍(なが)ら、ストーブの側を離れた早坂勇、部長の廻転椅子の肘掛に腰を下すように、新聞社の編輯局にだけ許されて居る不作法な様子で、千種十次郎の手から受話器をたぐり寄せました。
「親分」ガラッ八の八五郎は息せき切っておりました。
「親分、向島は見頃だそうですね」ガラッ八の八五郎は、縁側からニジリ上がりました。
「へツへツ、親分、今晩は」ガラツ八の八五郎、箍(たが)のはじけた桶のやうに手のつけやうの無い笑ひを湛(たゝ)へ乍ら、明神下の平次の家の格子を顎で――平次に言はせると――開けて入るのでした。
「羨ましい野郎があるもんですね、親分」夏の夜の縁先、危い縁臺を持ち出して、蚊を叩き乍ら、八五郎は斯んなことを言ふのです。
「銭形の親分さん、お助けを願います」柳原土手、子分の八五郎と二人、無駄を言いながら家路を急ぐ平次の袖へ、いきなり飛付いた者があります。
「あら松根様の若様」「――――」恐ろしい魅力のある声を浴せられて、黙って振り返ったのは、年の頃二十三四、色の浅黒い、少し沈鬱な感じですが、何となく深味のある男でした。
「親分、お早やう」飛込んで來たのは、お玉ヶ池の玉吉といふ中年者の下つ引でした。
「親分、良いお天氣ですね――これで金さへありや――」薫風に懷ろを膨らませて、八五郎はフラリと入つて來ました。
「親分、近頃つくづく考えたんだが――」ガラッ八の八五郎は柄にもない感慨無量な声を出すのでした。
「親分の前だが、女日照の國には、いろんな怪物がゐるんですね」八五郎がまた、親分の平次のところへ、世上の噂を持込んで來ました。
「親分、犬が女を殺すでしょうか」淡雪の降った朝、八五郎のガラッ八は、ぼんやりした顔で、銭形平次のところへやって来ました。
八五郎の取柄は、誰とでも、すぐ友達になれることでした。
前書き――百年前の飛行機百年前、日本には既に空飛ぶ機械が発明されて居たのでした。
「親分」「何だ八、また大変の売物でもあるのかい、鼻の孔が膨らんでいるようだが」銭形の平次はいつでもこんな調子でした。
浪人大澤彦四郎は、まことに評判の良い人でした。
「親分、金持になつて見たくはありませんか」八五郎はまた途方もない話を持ち込んで來たのです。
マークのついた作品は著作権が存続しています。 詳細は 青空文庫公式サイトの取り扱い基準 をご確認のうえ、取り扱いの際は十分注意してください。