5分以内で読める青空文庫の短編作品（6ページ目）

この作品は「新聞配達夫」とは又別の意味で一気に終りまで読ませ、しかもなかなかひきつけるところのある作品である。

ものものしい桜が散った。

伯耆の国、黒坂村の近くに、一条の滝がある。

星岡時代、残肴を見て感あり、料理人一同に留意を促すゆえんを述べたことがある。

映画についてむつかしいもの。

凡てのいまはしい物の形をあからさまに照す日の光が、次第に薄らいで、色と響と匂のみ浮立つ黄昏の來るのを待つて、先生は「社會」と云ふ窮屈な室を出で、「科學」と云ふ鐵の門を後にして、決して躓いた事のない極めて規則正しい、寛濶な歩調で、獨り靜に藝術の庭を散歩する。

五月五日には天皇賞レースがある。

去年の梅雨には曇天が毎日續いた。

兄は「探偵趣味」第五集で、僕の言論のやり方を社会主義的と云ったが是は少々妥当を欠く。

二人が知りあったのは、青年の夏休みのアルバイトからだった。

その高橋五郎といふ人は、他にどんな仕事をした人か、私は知らない。

はらをへらした人のむれに、ぼくは食堂横町へながされていった。

ある日、子供がガラスのびんを手に持って、金魚をほしいといって、泣いていました。

夏の街の恐怖焼けつくやうな夏の日の下におびえてぎらつく軌条の心。

捕物小説は、ただもう卑俗な、全く無価値な文学であるかの様に読まぬうちから、或いは一寸めくって見て、軽侮する傾向が強いが、これは如何？捕物小説はも一度見なおされるべきではないか。

正直に云つて、晩年の鏡花先生は時代に取り残されたと云ふ感がないではなかつた。

このごろ私の随筆集が出たので出版元から是非内田百間さんに批評風な紹介を書いて貰ひたいと頼むと、内田さんは以前室生さんがあまり褒めて呉れたので、改めて褒め返すことが変だといふ理由で控へられたさうである。

とかく、現代人はまだ、辞書辞典などを、ほんとに、自分の頭脳にしきっていない。

わたくしは直接には奥様とお呼びしてかげでは晶子さんと呼び慣はした。

私は私の意志によって生れてきたわけではないので、父を選ぶことも、母を選ぶこともできなかった。

二百年ばかり前に、京都に飾屋九兵衞という商人が居た。

文化の発展には民族というものが基礎とならねばならぬ。

むぐらをわけて行くと、むやみに赤蛙がとびだす。

58号の電車で女郎買に行つた男が梅毒になつた彼は12の如き沈黙の男であつたに腕々々交通巡査には煩悶はないのか自殺せぬ自殺の体験者は障子に手を突込んで裏側からみてゐましたアカデミッシャンは予想の把持者なのに……今日天からウヅラ豆が畠の上に落ちてゐました。

小林多喜二のお母さんあなたの長男である多喜二さんが死なれてから十九年の日が流れていますそしてあなたは八十才になられましたこの十九年の年月はお母さんにとってどのようなものでありましたでしょう戦争が敗けて日本共産党の人たちが赤い旗をかかげて刑務所から出てきた時あなたの喜びとかなしみはどんなでありましたでしょうその人たちが子供も育っている家庭を形作っているのをながめられたときのあなたの気持...

おツと大将、そこぢやて、江戸ツ子はンの間違ひ、いつも其処ぢや、いかにも上方もンは銭勘定が高い、高いがな、そりや日用の生活費か、但し商売上の算盤づくで、てンから帳面に上せて遊びと来たら、はゝゝゝ失礼ぢやが、迚（とて）も東京の人の真似の出来るこツちやない、全体この東京で気が大きいとか、金放れがどうとかいふのは、まづ五円ぐらゐから十円位までの事、お気の毒やが少し手荒いところで、精々二三十円から、六十円、もう百円となれば江戸ツ子はン、ちと困るなア、はゝゝゝよし一夜に二百円ぐらゐ使ふ人もあるやろ、...

拜啓三十日夜、相州酒匂松濤園に一泊、間近に富士を望み松原に寄する夕波の趣佳し。

○岩手県というところは一般の人が考えている以上にすばらしい地方だということが、来て住んでみるとだんだんよく分ってきました。

私の独断によると、織部という陶器は、古田織部という茶人の意匠及び発明に始まるものではない。

一文學美術の理論に關して疑問の起つた時にはまづ審美綱領と審美新説の二書を讀む。

燕（えん）の恵王の墓の上に、一疋の狐と一疋の狸が棲んでいた。

八月の炎天の下、屋根普請に三四人の工人達が屋根を這ったり上ったり降りたりしていた。

黒いトカゲ弱い外光の中、舟底椅子にもたれてウトウトと昼寝をしたのだがさめた。

十一月の夜をこめて雪はふる雪はふる黄色なランプの灯の洩れる私の窗にたづね寄る雪の子供ら小さな手が玻璃戸を敲く玻璃戸を敲く敲くさうしてそこに息絶える私は聽く彼らの歌の靜謐靜謐靜謐。

良寛の書には、不肖ながら私も心の底から惚れこんで、一通り見られるだけのものは、百点位見た積りである。

むかし、式部大輔大江匡衡といふ人がありました。

昔、寺田（寅彦）先生が、よく「線香の火を消さないように」という言葉を使われた。

短歌三十一文字と定まりたるを三十二文字乃至三十六文字となし俳諧十七字と定まりたるを十八字乃至二十二三字にも作る事あり。

明治以後、暦法の変化によって年中行事の日取りが変ったものと、変らないものとがある。

わが日の本は島国よ朝日かがよう海に連りそばだつ島々なればあらゆる国より舟こそ通えされば港の数多かれどこの横浜にまさるあらめやむかし思えばとま屋の煙ちらりほらりと立てりし処今はもも舟もも千舟泊る処ぞ見よや果なく栄えて行くらんみ代を飾る宝も入りくる港。

祝文當今開化文明ノ域ニ進入シ、積年ノ舊慣陋習ヲ一洗シ、文學ノ大ニ行ハルヽヤ、僻陬ノ村落ト雖モ聖教ニ沐シ、徳化ニ浴セサルハ無ク、各其業トスル所ヲ得ル。

同じことを、東京では世界一、地方では日本一と誇る。

虫の中でも人間に評判のよくないものの随一は蛆（うじ）である。

むかし、あるところに一疋（ぴき）の竜がすんでいました。

七八月にわたって病気のため「復員殺人事件」が中絶、申しわけありません。

尾生は橋の下に佇（たたず）んで、さっきから女の来るのを待っている。

君は古稀を過ぐる長き人間生活に於て、また半世紀に達する長き文壇生活に於て、敢て奇を弄せず環境に身を委ねて生存を持続されたり。

男は河から蘆を切つて來て、女の爲に産屋を葺いた。

めずらしいものが降った。

去る五月の中旬、大和の榛原町に行つた時、同町字足立といふ部落が、鬼筋だといふ説について、土地の人に尋ねて見たところが、昔こゝに安達ヶ原の鬼婆々が居つたといふ話があると教へてくれた。