60分以内で読める青空文庫の中編作品（6ページ目）

前号でお別れしてから横断旅行の一隊は、炎天に照り付けられ、豪雨に洗われて、その行を続けた。

後白河法皇の院政中、京の加茂の川原でめずらしい死罪が行われた。

私がその不思議なクラブの存在を知ったのは、私の友人の井上次郎によってでありました。

二人の稚児は二つ違いの十三に十五であった。

前言この作は旧作である。

序記国土成生の伝説大正十二年九月一日の大地震及び地震のために発したる大火災に遭遇して、吾吾日本人は世界の地震帯に縁取られ、その上火山系の上に眠っているわが国土の危険に想到して、今さらながら闇黒な未来に恐怖しているが、しかし考えてみれば、吾吾は小学校へ入った時から、わが国土が地震と火山とに終始していて、吾吾国民の上には遁（のが）れることのできない宿命的な危険が口を開いて待っているということを教えられていたように思われる。

明治三十七年の春から、三十八年の秋へかけて、世界中を騒がせた日露戦争が漸くポウツマス条約に終りを告げ、国力発展の名の下に、いろいろの企業が続々と勃興して、新華族も出来れば成り金も出来るし、世間一帯が何となくお祭りのように景気附いて居た四十年の四月の半ば頃の事でした。

天草四郎という美少年は実在した人物には相違ないが、確実な史料から彼の人物を知ることはほとんどできない。

×月×日雨。

Y（ワイ）口蓋音子音字の一。

安部忠良の家は十五銀行の破産でやられ、母堂と二人で、四谷谷町の陽あたりの悪い二間きりのボロ借家に逼塞していた。

十一月四日は、たまたま函館にある北大の水産学部で、文化講義をする日になっていた。

――はっきり言ってごらん。

私はこの地方にいるものではありません、東京の方に平生住っております。

クールラントの牧師カルル・アメンダ宛一八〇一年六月一日、ヴィーン親しい善きアメンダ、心からなる友よ。

私は應仁の亂に就て申上げることになつて居りますが、私がこんな事をお話するのは一體他流試合と申すもので、一寸も私の專門に關係のないことであります、が大分若い時に本を何といふことなしに無暗に讀んだ時分に、いろいろ此時代のものを讀んだ事がありますので、それを思ひ出して少しばかり申上げることに致しました。

「扨（さ）て一人の男が浜で死んだ。

第１図野兎第２図熟兎第３図岩兎この一篇を綴（つづ）るに先だち断わり置くは単に兎と書いたのと熟兎と書いた物との区別である。

親の垢（あか）几帳面な藩邸の中に、たった一人、ひどく目障りな男が、この頃、御用部屋にまごまごしている。

シャーロック・ホームズにとって、彼女はいつも『かの女』であった。

六月三十日、Ｓ――村尋常高等小学校の職員室では、今しも壁の掛時計が平常の如く極めて活気のない懶（もの）うげな悲鳴をあげて、――恐らく此時計までが学校教師の単調なる生活に感化されたのであらう、――午後の第三時を報じた。

かわいそうなヨハンネスは、おとうさんがひどくわずらって、きょうあすも知れないほどでしたから、もうかなしみのなかにしずみきっていました。

「病人たちの不平は知っている」新出去定は歩きながら云った、「病室が板敷で、茣蓙（ござ）の上に夜具をのべて寝ること、仕着が同じで、帯をしめず、付紐を結ぶことなど、――これは病室だけではなく医員の部屋も同じことだが、病人たちは牢舎に入れられたようだと云っているそうだ、病人ばかりではなく、医員の多くもそんなふうに思っているらしいが、保本はどうだ、おまえどう思う」「べつになんとも思いません」そう云ってから、登はいそいで付け加えた、「却って清潔でいいと思います」「追従を...

カマキリ親爺は私のことを奥さんと呼んだり姐さんと呼んだりした。

享保十八年、九月十三日の朝、四谷塩町のはずれに小さな道場をもって、義世流の剣道を指南している鈴木伝内が、奥の小座敷で茶を飲みながら、築庭の秋草を見ているところへ、伜（せがれ）の主水が入ってきて、さり気ないようすで庭をながめだした。

グラウンドではラグビイの選手達が練習をしていた。

日本には怪談はかなりあるけれども、其の多くは仏教から胚胎した因果物語か、でなければ狐狸などの妖怪であって、独立した悪魔のような物語はあまりない。

其頃はギリシヤ人にサラシンとよばれたバルタザアルがエチオピアを治めてゐた。

急行列車が駅にとまると、二人か三人の私服刑事らしき人物が車内の人物の面相を読みつつ窓の外を通りすぎる。

人間は悲しい。

「八、あれを跟（つ）けてみな」「ヘエ――」「逃がしちゃならねえ、相手は細かくねえぞ」「あの七つ下がりの浪人者ですかい」「馬鹿ッ、あれはどこかの手習師匠で、仏様のような武家だ。

「親分、子さらいが流行るんだってネ」「聞いたよ、憎いじゃないか」銭形平次は苦い顔をしました。

二人で丁度一番高い岩山の巓（いたゞき）まで登つた。

「親分、――ちょいと、八五郎親分」ガラッ八は背筋を擽（くすぐ）られるような心持で振り返りました。

信長の崛起天文十八年三月のこと、相遠参三ヶ国の大名であった今川氏を始めとし四方の豪族に対抗して、尾張の国に織田氏あることを知らしめた信秀が年四十二をもって死んだ。

小石川水道端に、質屋渡世で二万両の大身代を築き上げた田代屋又左衛門、年は取っているが、昔は二本差だったそうで恐ろしいきかん気。

［＃ページの左右中央］著作界の売名家、奇人変人中のニセ悪人雑学大博士外骨先生著近来にない簡潔犀利の力作一円本流行の害毒と其裏面談熱烈の筆痛快の論辛辣と皮肉好謔と善罵拍案拍掌愉絶壮絶溜飲の薬にもなる（一冊定価金タッタ十銭）［＃改丁］著者自本書の著者は彼是と多忙の身であるが、現在の円本流行を黙過すべからざる害毒問題として、天下に吼号し、以て読書界の進展と出版界の転機を促さ...

空の麗しさ、地の美しさ、万象の妙なる中に、あまりにいみじき人間美は永遠を誓えぬだけに、脆（もろ）き命に激しき情熱の魂をこめて、たとえしもない刹那の美を感じさせる。

「八、どこの帰りだ。

Ｙ君は語る。

レイクランヅはハイカラな避暑地の目録には入つてゐない。

「おっと、待った」「親分、そいつはいけねえ、先刻――待ったなしで行こうぜ――と言ったのは、親分の方じゃありませんか」「言ったよ、待ったなしと言ったに相違ないが、そこを切られちゃ、この大石がみんな死ぬじゃないか。

面白い話しがあるのですよ。

墨子は周秦の間に於て孔子老子の學派に對峙した鬱然たる一大學派の創始者である。

笛の名人春日藤左衛門は、分別盛りの顔を曇らせて、高々と腕を拱（こまぬ）きました。

「親分、飯田町の上総屋が死んだそうですね」ガラッ八の八五郎は、またニュースを一つ嗅ぎ出して来ました。

銭形平次が関係した捕物の中にも、こんなに用意周到で、冷酷無慙なのは類のないことでした。

箱根山にかかると、車内も大分落着いて来た。

一、その翌日「お父さんが、なくなられたと、いうじゃないか」「ウン」「矢張り本当なんだね。

不動明王の木像が、その右手に持った降魔の利剣で、金貸叶屋重三郎を突き殺したという、江戸開府以来の大騒ぎがありました。