30分以内で読める青空文庫の短編作品（6ページ目）

○ベースボールに至りてはこれを行う者極めて少くこれを知る人の区域も甚だ狭かりしが近時第一高等学校と在横浜米人との間に仕合ありしより以来ベースボールという語ははしなく世人の耳に入りたり。

話はだいぶ古めくが、大正十一年の秋の或（あ）る一夜のことだ。

私は日本酒の味はきらひで、ビールの味もきらひだ。

天地愛好すべき者多し、而（しか）して尤も愛好すべきは処女の純潔なるかな。

おもてには快楽をよそい、心には悩みわずらう。

今からざっと三年半前、一九四九年の夏前に、久坂葉子は、この世に存在しはじめた。

うつせみのわがうすごろも風流男に馴（な）れてぬるやとあぢきなきころ（晶子）眠れない源氏は、「私はこんなにまで人から冷淡にされたことはこれまでないのだから、今晩はじめて人生は悲しいものだと教えられた。

荷風歳卅九◯九月十六日、秋雨連日さながら梅雨の如し。

お住の倅（せがれ）に死別れたのは茶摘みのはじまる時候だつた。

×すべて背景を用いない。

再びこの人を見よクリストは「万人の鏡」である。

そのとき私は大へんひどく疲れていてたしか風と草穂との底に倒れていたのだとおもいます。

私はほんとに馬鹿だつたのかもしれない。

私はストリップを見たのは今度がはじめてだ。

一本木の野原の、北のはずれに、少し小高く盛りあがった所がありました。

明治二十三年八月十七日、上野より一番汽車に乗りていず。

［＃ページの左右中央］ハイリゲンシュタットの遺書＊わが弟カルルおよび（ヨーハン＊＊）に。

むかし昔、ある所に、お金持の商人がいて、三人のむすこと三人のむすめと、つごう六人のこどもをもっていました。

あるおひるすぎのことです。

人間文化の進歩の道程において発明され創作されたいろいろの作品の中でも「化け物」などは最もすぐれた傑作と言わなければなるまい。

そのとき西のぎらぎらのちぢれた雲のあいだから、夕陽は赤くななめに苔（こけ）の野原に注ぎ、すすきはみんな白い火のようにゆれて光りました。

わんある冬の日の暮、保吉は薄汚いレストランの二階に脂臭い焼パンを齧（かじ）っていた。

寝つきりに寝つくやうになる少し前に修善寺へ行つた。

近代女流俳句は、大正七年以降全国的に長足の進歩をとげているのであるが、しかも尚お、閨秀の和歌に較べて、はるかに下位に取扱われ、閨秀歌人が自由に自家の歌集を世にとい、一般民衆と接触があるに反し、女流俳句は殆ど近代文芸のらち外に置かれているかの感がある。

ヨワン榎（えのき）は伴天連ヨワン・バッティスタ・シロオテの墓標である。

大正十二年八月二十四日曇、後驟雨子供等と志村の家へ行った。

むかし、金太郎という強い子供がありました。

近頃は有頂天の山名宗三であった。

冬の蠅（はえ）とは何か？よぼよぼと歩いている蠅。

恋愛は人世の秘鑰なり、恋愛ありて後人世あり、恋愛を抽き去りたらむには人生何の色味かあらむ、然るに尤も多く人世を観じ、尤も多く人世の秘奥を究むるといふ詩人なる怪物の尤も多く恋愛に罪業を作るは、抑も如何なる理ぞ。

路青い野原のなかを、白い路がながく／＼つヾいた。

室生君。

昔、ある北の国の山奥に一つの村がありました。

八年まえの事でありました。

聖徳太子に關して徳川時代の儒者で之を作者の聖と稱せし人があつたが、之は最も善く當つて居つて、殆んど其の人格の全體を悉して居ると思ふ。

『文学』の編輯者から『徒然草』についての「鑑賞と批評」に関して何か述べよという試問を受けた。

「九時二十分……」新橋のホームで、魚返光太郎が腕時計を見ながらつぶやいた。

戦争後に流行しだしたものの中には、わたくしのかつて予想していなかったものが少くはない。

それは、ロシアのある大きな町であったことだ。

奥さまは、もとからお客に何かと世話を焼き、ごちそうするのが好きなほうでしたが、いいえ、でも、奥さまの場合、お客をすきというよりは、お客におびえている、とでも言いたいくらいで、玄関のベルが鳴り、まず私が取次ぎに出まして、それからお客のお名前を告げに奥さまのお部屋へまいりますと、奥さまはもう既に、鷲（わし）の羽音を聞いて飛び立つ一瞬前の小鳥のような感じの異様に緊張の顔つきをしていらして、おくれ毛を掻（か）き上げ襟もとを直し腰を浮かせて私の話を半分も聞かぬうちに立って廊下に出て小走りに走って、...

「銭形平次」で世界的多作家に江戸川乱歩ずいぶん書いたね。

ある人のもとにて紫式部と清少納言のよしあしいかになどいふ事の侍りし人は式部／＼とたゞほめにほめぬしかあらんそれさる事ながら清はらのおもとは世にあはれの人也名家の末なれば世のおぼえもかろからざりしやしらず万に女ははかなき物なればはか／″＼しき後見などもなくてはふれけむほどうしつらしなどみにしみぬべき事ぞ多かりけらしやう／＼宮づかへに出初ぬる後宮の御いつくしみにさる人ありとしられ初て香爐峯の雪に簾をまくなど才たけたりとはかくしてぞあらはれぬ少納言は心づからと身をもてなすよりはかくあ...

むかしむかし翁は山へ柴刈に、媼（ばば）は洗濯の河にて、拾いし桃実の裏より生れ出でたる桃太郎、猿雉子犬を引率［＃ルビの「いんぞつ」はママ］してこの鬼ヶ島に攻来り、累世の珍宝を分捕なし、勝矜らせて還せし事、この島末代までの恥辱なり、あわれ願わくは武勇勝れたる鬼のあれかし、其（その）力を藉（かり）てなりともこの遺恨霽（はら）さばやと、時の王鬼島中に触を下し、誰にても...

八九歳のころ医者の命令で始めて牛乳というものを飲まされた。

天主教徒の古暦の一枚、その上に見えるのはこう云う文字である。

子供のころから、お洒落のようでありました。

たましいの、抜けたひとのように、足音も無く玄関から出て行きます。

アメリカのレビュー団マーカス・ショーが日本劇場で開演して満都の人気を収集しているようであった。

人が非暴力であると主張する時、彼は自分を傷けた人に對して腹を立てない筈だ。

強い女王スカァアが剣持つ手の掌に死の影を握って支配していたスカイの島をクウフリンが立ち去った時、そこには彼の美を惜しむなげきがあった。