30分以内で読める青空文庫の短編作品（7ページ目）

二人は湯から上って、一局囲んだ後を煙草にして、渋い煎茶を啜（すす）りながら、何時の様にボツリボツリと世間話を取交していた。

キッコの村の学校にはたまりがありませんでしたから雨がふるとみんなは教室で遊びました。

明けくれに昔こひしきこころもて生くる世もはたゆめのうきはし（晶子）薫は山の延暦寺に着いて、常のとおりに経巻と仏像の供養を営んだ。

私は若い時分に、創作に専心したいために或る山奥の空家に引込んで、自炊生活をやったことがある。

失題嚴寒勉學坐ス二深宵ニ一。

聖フランシス樣、聖ベネディクト樣、この家を惡しき者共からお守り下さい。

十六、七のころ、わたくしは病のために一時学業を廃したことがあった。

これはアメリカのアーネスト・トムソン・シートンという人が書いた物語で、文中『私』とあるのはシートン氏のことです。

或声お前は俺の思惑とは全然違つた人間だつた。

いやどうも、ごらんの通り元気でね、この分では当分死にそうもありませんよ、困ったもんです。

クという名前のねずみがありました。

熊本第五高等学校在学中第二学年の学年試験の終わったころの事である。

魯の叔孫豹がまだ若かった頃、乱を避けて一時斉に奔ったことがある。

私達の友人は既に、彼の本性にかなはない総ての物を脱ぎ棄て、すべての物を斥けた。

基督教国にはどこにでも、「さまよえる猶太人」の伝説が残っている。

最近東京を騒がした有名な強盗が捕まって語ったところによると、彼は何も見えない闇の中でも、一本の棒さえあれば何里でも走ることができるという。

自然と人生と、二つは向き／＼に進み、又時としては抗立相剋せんとするものゝ如く思ふ人が、此頃多くなつたやうに感じられる。

文化六年の春が暮れて行く頃であつた。

私は女子の生活が精神的にも経済的にも独立することの理想に対して、若い婦人の中の識者から反対説が出ようとは想像しませんでした。

私が小説を執筆するのは、目に入った種々のもの（風景や建築や雰囲気など）、観念、出来事、そして美術や文学の中で出会ったイメージから生まれた驚異や美や冒険への期待についての、曖昧で捕らえ所のない断片的な印象を、一層明確に詳細にかつ安定した形で目に見えるようにして、自分自身を満足させるためです。

玄冬の候、富士山巓の光景は、果して如何なるものなるべきや。

大学生、三浦憲治君は、ことしの十二月に大学を卒業し、卒業と同時に故郷へ帰り、徴兵検査を受けた。

又あすこへ来たなという、寒い様な魅力が私を戦かせた。

進駐軍、厚木キャンプの近くにある、聖ジョセフ学院中学部の初年級の担任教諭が、受持の生徒のことで、地区の警察署から呼出しを受けた。

今の東宮仮御所のある渋谷常盤松の辺は、土地がゆるやかに起伏し、道路が不整な線をなしてその間にうねっている。

父がなくなったときは、長兄は大学を出たばかりの二十五歳、次兄は二十三歳、三男は二十歳、私が十四歳でありました。

上何小二は軍刀を抛（ほう）り出すと、夢中で馬の頸（くび）にしがみついた。

上お京さん居ますかと窓の戸の外に来て、ことことと羽目を敲（たた）く音のするに、誰れだえ、もう寐（ね）てしまつたから明日来ておくれと嘘（うそ）を言へば、寐たつて宜いやね、起きて明けておくんなさい、傘屋の吉だよ、己れだよと少し高く言へば、嫌な子だねこんな遅くに何を言ひに来たか、又御餅のおねだりか、と笑つて、今あけるよ少時辛棒おしと言ひながら、仕立かけの縫物に針どめして立つは年頃二十余りの意気な女、多い髪の毛を忙がしい折からとて結び髪にして、少し長めな八丈の前だれ、お召の台なしな半...

はてしなき議論の後一九一一・六・一五・ＴＯＫＹＯわれらの且つ読み、且つ議論を闘はすこと、しかしてわれらの眼の輝けること、五十年前の露西亜の青年に劣らず。

総領娘を亡くしたことはいかにも残念であったが、くよくよしている場合でもなく、一方には学校という勤めがあるので取りまぎれていました。

巨男とお母さんの住んでいたところはここからたいへん遠くのある森の中でした。

若やかにうぐひすぞ啼（な）く初春の衣くばられし一人のやうに（晶子）新春第一日の空の完全にうららかな光のもとには、どんな家の庭にも雪間の草が緑のけはいを示すし、春らしい霞（かすみ）の中では、芽を含んだ木の枝が生気を見せて煙っているし、それに引かれて人の心ものびやかになっていく。

［＃ページの左右中央］太陽は神々の蜜である天涯は梁木である空はその梁木にかかる蜂の巣である輝く空氣はその蜂の卵である。

去る十二月十九日午後一時半から二時の間に、品川に住む二十六歳の母親が、二つの男の子の手をひき、生れて一ヵ月たったばかりの赤ちゃんをおんぶして、山の手電車にのった。

部屋の隅に据えた姿見には、西洋風に壁を塗った、しかも日本風の畳がある、――上海特有の旅館の二階が、一部分はっきり映っている。

何商売にも隠し言葉、隠語、俗に符牒というものがある。

学者のアラムハラドはある年十一人の子を教えておりました。

保吉は三十になったばかりである。

人間、退屈すると、何を始めるか知れたものではないね。

畏友Ｙ兄から、いつか面白い言葉をきいたことがある。

瑞西に住む友人の家では、或日語学の教師の老婦人が、変な泣顔をして遣って来たそうである。

帝銀事件はとくに智能犯というほどのものではないようだ。

始めに告白せざるを得ません。

そのころ私は不思議なこころもちで、毎朝ぼんやりその山を眺めていたのです。

私が巨万の富を蓄えたとか、立派な家を建てたとか、土地家屋を売買して金を儲（もう）けて居るとか、種々な噂（うわさ）が世間にあるようだが、皆嘘（うそ）だ。

加州石川郡金沢城の城主、前田斉広は、参覲中、江戸城の本丸へ登城する毎に、必ず愛用の煙管を持って行った。

地震の概念地震というものの概念は人々によってずいぶん著しくちがっている。

たしか長春ホテルであつたと思ふ。

しょうねんたんていだんのなかで、いちばんからだが大きくて力の強い井上一郎くんに、小学校三年生のルミちゃんという、かわいい妹がありました。

プロローグ何年目かで開かれた、それは本当に久し振りの「奇談クラブ」でした。